【ECモールに聞く!2024年の戦略】『au PAY マーケット』八津川博史氏「来期以降に大幅リニューアルを計画」

auコマース&ライフが運営するECモール「au PAY マーケット」は、変化し続けることで出店者の要望に応え続けようとしている。大型販促企画を刷新したり、ライブコマースやふるさと納税といった新しい売り場も強化したりしている。店舗の運営状況も考慮し、手間をかけない販促の自動化にも注力する。来期(2025年3月期)以降に、サイトの大々的なリニューアルも計画しており、さらなる進化を遂げそうだ。2023年の強化施策と、2024年以降の戦略について代表取締役副社長の八津川博史氏に聞いた。

――2023年の「au PAY マーケット」の状況は?

店舗数は順調に伸びている。流通額はアフターコロナで全体的な需要減もありつつ、伸ばすところは伸ばし、全体としては概ね横ばいといった感じだ。

商品カテゴリーごとに見ると、流通額の動向には差が出ている。全体的に堅調なのはグルメだ。コロナ禍にぐっと伸びたところから、その後も比較的堅調に推移している。われわれがさまざまな企画でグルメを扱ったり、それを見た新しい店舗さまが出店したりしていることが背景にはある。外に出る機会が増えたこともあり、美容・健康系も前年と比べると比較的堅調だ。

逆にコロナによってプラスの影響を受けていたカテゴリーは、揺り戻しがきている。家で着る服や家の中を豊かにするカテゴリーはコロナ禍にすごく伸びたが、その反動で現在は需要が収まっている。

2023年に最も売れた商品は、前年に続きマスクだった。一時より需要は落ちているが、マスクは日常のアイテムとなっており、ベースの需要は高まっている。衛生用品でも除菌用品などの流通は落ちている。

物価高や燃料費の高騰などの影響により、生活防衛のニーズが高まり、まとめ買いの傾向は進んでいる。

――販促企画で強化した点は?

主要な大型販促は1年くらいかけて、リニューアルしている。

2023年3月から、お買い上げいただいた金額によってポイントの還元率が上がっていく「ポイント超超祭」を開催している。

2023年8月には、毎月「3」の付く日に実施している「三太郎の日」の特典をリニューアルした。売れ筋の低単価の商品をまとめて買っていただきやすい内容にした。

――「ふるさと納税」ポータルサイトにおいて強化している点は?

「au PAY ふるさと納税」の機能や返礼品の取り扱いを断続的に強化できている。2023年12月には、全自治体の9割以上となる1600自治体を突破し、幅広い返礼品から選択いただくことが可能になった。

全国にあるauショップでもご紹介してもらっており、グループを挙げた取り組みで、新しいお客さまを獲得できている。

利用者には「au PAY マーケット」限定で利用できるポイントを還元しており、そこから「au PAY マーケット」での利用につながっている。

私もデータを見て驚いたが、ふるさと納税を利用したことがない方が相当数いる。そういった方に向けてリアルの接点で利用を促している。

――ライブコマースにおいて注力している点は?

ライブコマースは他モールに先駆けて参入している。社外のアイドルイベントと連携したり、吉本興業と連携したイベントを実施したりとさまざまな取り組みを実施している。

新たな視聴者を獲得するため、ジャンルごとにエッジの立ったキャスティングを行っている。尖ったライブ配信の番組を作り、アーカイブ化した後に、SNSで拡散することで、需要を開拓している。

最近だと「ウェザーニュース」と連携し、お天気お姉さんに番組出演していただいた。お天気お姉さんを推しているファン層が、新たに視聴していただける。他にもVTuberなどに出演していただいている。

ライブコマースはジャンルも広がり、実施回数も増えている。視聴者数の成長率は前年比157%と大きく伸びている。

――「au経済圏」とシナジーを発揮する取り組みは?

KDDIグループが実施しているクレジットカードを強化する取り組みや、「auマネ活プラン」のような通信と金融を掛け合わせた取り組みなどとコラボレーションしている。ポイントをフックに利用を促進したり、継続利用を促したりしている。

店舗さまを取り巻く状況としては、物価高や送料などのコスト高の影響で、利益を生み出しにくくなっていると思う。その中でも売り上げを伸ばしたいという店舗さまのニーズは感じている。

その状況を考えると、あまり手間暇をかけた店舗運営というよりは、できるだけ効率的に効果を上げたいというニーズがかなり強まっていると思う。メルマガを1件ずつ手書きで作成するというよりは自動化を進めたり、ある行動をとったお客さまに自動でクーポンなどを提供したりするようなことが求められている。そういった機能を強化するとともに、その機能をどう使いこなすといいかをお伝えさせていただいている。自動化機能の利用率は確実に高まっている。

お客さまに向けては、ターゲットや目的に合わせた特徴的な売り場を作りながら、店舗さまにはニーズに合う売り場で販促していただく取り組みも強化している。

――具体的にはどのような販促を実施したのか?

例えばタイムセールでは、ただタイムセールを実施するのではなく、お客さまにとってベストなタイミングでベストな商品を紹介している。「超還元セレクト」という、値引きしづらい商品を集めて、ポイントで大きくお返しするような企画もある。グルメでは、品質もレビューも高い商品を集めた企画を組んだりしている。大型販促と掛け合わせて、さまざまな企画をお客さまに提案している。

今後はもっと細かくセグメントを切り、「〇〇の日」というようなアプローチを実施することも検討している。テクノロジーを活用しながら、店舗さまが手間暇かけなくても販売できる機能や売り場をさらに強化していきたい。

――販促の自動化に注力しているのか?

店舗さまにご利用いただく自動化ツールに加えて、われわれからお客さまに送るマーケティングオートメーションのようなアプローチもある。アプリではタイムラインで情報を提供しており、SNS向けの情報配信も今後、増強していく。お客さまとのコミュニケーションタッチポイントを積極的に増やしている。

――2024年、特に注力する機能やサービスは?

お客さまとのコミュニケーションの最適化は終わりがないと思っている。体験価値を高める取り組みは追及し続けないといけない。例えばクーポンを一つお届けするにしても、それを使えるお店や商品を分かりやすく、使いやすくすべきだと考えている。

シーズンごとのイベントについては、できるだけ早いタイミングから店舗さまにご参加いただき、手間暇かけずに商品や価格を仕込んでいただけるように、企画のリードタイムを長めにとっていきたい。

まだ時期はお伝えできないが、将来的にサイトの大々的なリニューアルを計画している。メインであるサイトやアプリのトップページの見た目を大きく変えるだけではなく、検索やカテゴリー、商品ページのデザインも変える。レコメンドやパーソナライズを用いた提案を強化したり、店舗さまが望むクロスセルやアップセルを商品詳細ページでできるようにし、お客さまの選択の幅を広げたりするようなことも実現したい。かなり広範にデザインを刷新したり、機能を改善・改修したりすることになるだろう。