北九州市とIHI、日本IBMは1月18日、熱マネジメントによる北九州地域のGX(グリーントランスフォーメーション)の推進を目的とした連携協定を締結し、同日に記者説明会を開催した。
北九州市でGXを推進
連携協定にもとづき、国内の民生・産業部門で消費されるエネルギーの約6割を占める熱エネルギーの脱炭素化によるCO2排出量削減に向けた実証を行い、北九州市の事業者や学術研究機関と連携した地域内でのエネルギー融通の仕組み構築に向けた検討を進めていく。
協定の内容は新たな熱マネジメント事業「HaaS(Heat as a Service)」に向けた実証・事業化を検討し、熱分野に関するGX人材の育成促進を図る。
また、2022年11月に設立されたIBM九州DXセンター(北九州市)が、産官学共創の推進とGX人材育成や新規事業開発支援、熱マネジメントに必要なITソリューション開発などにおいて実証・事業化を推進する。
北九州市長の武内和久氏は「これまで国内でも取り組みがない領域だったが、2030年に熱関連市場の規模は1兆5000億円の見通しとなっている。今回の取り組みは、それぞれの強み・役割を持ち寄ったプロジェクトだ」と述べた。
北九州市は、鉄鋼や化学などの素材産業、金属や機械などの加工組立産業を中心に、ものづくり産業が集積しており、現在は環境先進都市として、2022年2月に策定した「グリーン成長戦略」にもとづき、2050年ゼロカーボンシティの実現に向け、環境と経済の好循環による新たな成長を産官学で協働して総合的かつ戦略的に推進している。
同市では、環境とものづくり産業集積の強みを活かし、グリーンとテクノロジーの掛け合わせによる新たな産業の創出や、企業の競争力強化に繋がる脱炭素化の実現に向けたイノベーションを創出するため「北九州GX推進コンソーシアム」を昨年12月に設立。同コンソーシアムの取組みを通じたGX関連の研究開発・産業集積の加速化と地域企業の変革を進め、北九州市が掲げる「稼げるまち」の実現を目指している。
2030年には数百億円規模のビジネスへ
今回の連携協定において、IHIは製造業のノウハウをもとに実証・事業化をリードし、日本IBMは新規事業開発支援、機器運用データを集中管理するデジタルソリューションの開発、北九州市は実証に参画を希望する企業の掘り起こし、学術研究機関とのマッチングなどを手がける。
すでに、旭ファイバーグラスや石川金属工業、シャボン玉せっけん、シンコウなどの企業6社が実証への協力を表明しており、工場・企業内の熱利用の最適化サービスの実証を進めていく考えだ。
IHIの産業システム・汎用機械事業領域では一般産業界を支える設備を提供し、バリューチェーン全体でデジタル基盤の活用によるカーボンニュートラル化を推進。熱は一般産業界での重要なエネルギー源であると同時に、大半が有効利用されずに捨てられているのが現状だという。
同社グループの知見を活かして、地域で熱のマネジメントを最適化する仕組み構築などに取り組み、2050年までにバリューチェーン全体でのカーボンニュートラルを実現するという。
IHI 常務執行役員 産業システム・汎用機械事業領域長の茂垣康弘氏は「民生・産業部門におけるエネルギー需要は熱の比率が最も高い一方で、多量の熱が有効利用されず捨てられており、熱マネジメントに取り組む重要度は高い。熱利用最適化モデルをHaaSとして構築し、実証を重ねつつビジネスに展開し、2030年には数百億円規模のビジネスを目指す」と意気込みを語った。
IBMは、2021年2月に2030年までに温室効果ガス排出量をネット・ゼロとすることを宣言し、175カ国以上で排出量削減やエネルギー効率向上などテクノロジーを活かした取り組みを推進している。
また、IBMコンサルティングでは、企業のデジタル変革の戦略立案からシステム構築まで推進するとともに、サステナビリティ領域においても、戦略からレポーティング、エネルギーマネジメントのプラットフォーム構築、エコシステム形成まで総合的に支援。
そうした取り組みを地域で実現するための拠点として、IBM地域DXセンターを2022年から全国7カ所に開設し、地域のDX推進やイノベーションの創出に取り組んでいる。2022年11月に同社の北九州事業所内で10人からスタートしたIBM九州DXセンターは、昨年末にリバーウォーク(北九州市小倉北区)にオフィスを追加し、ビジネスパートナーを含めて60人体制となっており、今夏には建設中のBIZIA KOKURA(同)に新オフィス開設、リバーウォークのオフィス増床を予定している。
日本IBM 取締役副社長執行役員 IBMコンサルティング事業本部長の加藤洋氏は「当社の戦略コンサルティング部門がデジタルテクノロジーを活用して新規事業開発を支援し、DXセンターによるシステム開発や地元企業・教育機関との協業、GX人材を育成する。また、北九州市において事業の拡大や雇用を創出していく」と力を込めていた。