企業の成長に欠かせない人財。その育成は、企業の大きな関心事の1つだ。昨今はリスキリングに注目が集まるなど、新たなスキルを取得したい、既存スキルのブラッシュアップを図りたいと考える人も増えている。ビジネスに有用なスキルはさまざまあるが、中でも人気の高いスキルの一つは語学力だろう。

技術進歩や社会の変化に対応するため社員の「アップデート力(自律的に自分のスキルや知識を常に更新し続ける姿勢)」を後押しする施策に取り組む日立ソリューションズでも、かねてより従業員の英語力向上に向けた研修プログラムをオンライン・オフラインの両面で行っている。そんな同社が2023年10月、新たに導入したのがAI英会話アプリ「スピークバディ」だ。

すでに豊富な英語学習支援プログラムを提供していた同社がなぜ、さらにアプリの導入を決めたのか。導入から約3カ月経つ今、どのような効果を感じているのか。日立ソリューションズ 人事総務本部 タレントマネジメント部 人財開発グループ 主任の阪口智美氏に伺った。

  • 左から、取材に同席したスピークバディ 営業部 部長の伊藤健史氏、同 カスタマーサクセス マネージャー 大谷千夏氏と日立ソリューションズ 人事総務本部 タレントマネジメント部 人財開発グループ 主任の阪口智美氏

ますます需要が高まるグローバル人財

日立ソリューションズでは、グローバル事業の拡大に向けグローバル人財の育成を推進している。阪口氏によると、同社ではグローバル人財に必要な英語力の基準として、TOEIC600点程度の獲得を設定しているという。現在は全社員4874名(2023年3月31日現在)のうち、921名がグローバル人財に該当しており、各種教育プログラムを提供している。

グローバル人財の活躍の場は、海外への製品・ソリューション販売や海外商材の日本企業への導入の場だけにとどまらない。オフショア先のエンジニアや、その橋渡しとなるブリッジエンジニアとのやり取りも高い英語力が必要となる場合が多い。最近では、社員が海外で開催される展示会に参加し、最先端の技術や情報をいち早く入手する活動も再開してきた。出展企業との折衝の場では幅広いグローバルスキルが必要だが、やはり要となるのは英語力だ。

従来から、グローバル人財へは、英会話や海外業務研修、グローバルスキル研修といったさまざまな研修プログラムを提供しているが、「英語のスキルは継続学習が大事」だと阪口氏は話す。

“アップデート力”にも英語力は必須

日立ソリューションズは自己啓発支援制度の拡充にも力を入れている。

「弊社は技術変遷が早いIT業界の企業であり、ビジネス環境の変化やテクノロジートレンドをいち早くキャッチし、積極的に学ぶ必要があります。VUCA時代となり、この傾向はより求められるようになりました。そこで、弊社では自律的に自分のスキルや知識を常に更新しつづける力をアップデート力と称し、自己啓発支援制度を提供しています」(阪口氏)

自己啓発支援制度の一つに「英語力向上支援制度」がある。前述したような英会話に加え、TOEICの問題を1日1通配信するメールマガジンや、オンライン学習プラットフォームなどをメニューとして揃え、英語の継続学習を支援してきた。

十分手厚いサポートが行われているように見えるが、なぜさらにAI英会話アプリ「スピークバディ」を追加したのか。

阪口氏はその理由を、次のように説明する。

「語学力や学習に割ける時間などは社員によってさまざまです。どのような状況の社員であっても語学の継続学習がしやすい自己啓発支援メニューにしたいと考えていました。当時、通学やオンライン形式の英会話の利用者数は年間で約70名程度、1日1問が英語の問題がメールで届くメールマガジンの受信者は600名いました。学習意欲がある社員はいるものの、英会話スクールに通うまでにはハードルがあるのではないかと感じたのです。そこで、従前から英語力向上支援制度として提供しているメニューを『受講者が開始時に必要な英語力』『提供されるプログラムの量や質』『時間・場所の制約』で比較し、3項目ともに高いレベルを要求される通学やオンライン形式の英会話と3項目共に低く簡単に利用できるメールマガジンの間を埋めるような、英語学習手段をメニューに加えたら学習者が増えるのではと考えました」(阪口氏)

そこで通学やオンライン形式の英語学習と、気軽に採り入れられるものの、意欲的な学習にまでは至りづらいメールマガジンなどの施策の間をつなぐ存在として、アプリで学べる英会話サービスの導入の検討がスタートしたのだ。

「他のサービスと比較して、アプリであれば、手軽にアウトプットとフィードバックの機会が持てるのではないかと考えました」(阪口氏)