AWSジャパンはこのほど、年次イベント「AWS re:Invent 2023」に関する記者説明会を開催した。今年は11月27日から12月1日までの5日間にわたり開催された同イベント。
例年、「AWS re:Invent」では、多くの新サービスが発表され、すべてを把握することは難しい。今回、技術統括本部 技術推進グループ本部長 小林 正人が「AWS re:Invent」で発表された主要なサービスアップデートについて説明したので、本稿では、生成AIに関連したサービス紹介する。
生成系AIアシスタント「Amazon Q」
今回、最も注目を集めたのは生成系AIアシスタント「Amazon Q」だろう。同サービスの特徴はビジネスユースにフォーカスしている点だ。そのため、企業が求めるレベルのセキュリティとプライバシーが組み込まれており、モデルのトレーニングにおいてユーザーのデータを一切利用しない。
ユーザー組織の情報に基づいて、日々の仕事の処理や意思決定の支援、問題解決、イノベーションの実現に必要な情報とアドバイスなどを行う。プレビュー版の提供が開始されている。
「Amazon Q」は、ビジネスユーザーや開発者が、マネジメントコンソール、ドキュメントページ、AWSのWebサイトなど、どこででも利用できるという。ビジネスユーザー、開発者が「Amazon Q」が使いこなすためのサービスも発表されている。
ビジネスユーザーを対象とした「Amazon Q」 のサービス
ビジネスユーザーを対象としたサービスとしては、以下が発表された。
Amazon Q in Amazon QuickSight
Amazon Q in Amazon QuickSight (プレビュー) 生成AIによってダッシュボード作成や意思決定を容易にする機能。
Amazon Q in Amazon Connect(一般利用開始)
リアルタイムの会話に基づき、オペレータにアクションを提案し、関連文書へのリンクを提示する機能。
Amazon Q in AWS Supply Chain
「何が」「なぜ」といった質問をサプライチェーンのデータに対して投げかけて、複雑なシナリオを可視化する形で回答を得ることができる機能
開発者を対象とした「Amazon Q」 のサービス
一方、開発者はAmazon Qの対話型インタフェースでシステム開発・デプロイ・運用を進めることができる。
Amazon CodeWhisperer 経由でIDEにアクセスすると、Amazon Q はソフトウェア構築の専門知識と顧客のコードの理解とを組み合わせる。これにより、開発者は Amazon Q を使用して、質問することで特定のプログラミングロジックを説明できる。
Amazon Q はトラブル対応に利用可能で、マネジメントコンソールで ”Troubleshoot with Amazon Q”ボタンを押すと、エラーを解析し解決策を提示する。
また、Amazon Q Code Transformationを利用すれば、既存のコードの解析、修正が必要な要素の特定、新しいコードの生成、最新のセキュリティとパフォーマンス改善の取り込み、テストを実施することが可能。
Amazon Bedrockの新機能
生成AIのマネージドサービス「Amazon Bedrock」に関しては、3つのカスタマイズ機能の提供が開始された。
Fine Tuning(一般利用開始)
Cohere Command Lite, Meta Llama 2, Amazon Titan Text Lite & Expressでファインチューニングが可能になった。
Retrieval Augmented Generation(RAG) with Knowledge Bases(一般利用開始)
コンテキストや組織内の情報を利用して基盤モデルの応答をカスタマイズできるRAG機能をフルマネージドで提供。Amazon Bedrockがベクトルデータベースへの取り込みワークフローを処理する。
Continued Pre-training for Amazon Titan Text Lite & Express(プレビュー)
独自のラベルなしデータを使用してモデルをカスタマイズする機能。業界用語への対応など、ドメイン知識に基盤モデルを対応させ、ビジネス上のテーマに対するモデルの精度を向上する。
Agents for Amazon Bedrock
生成系アプリケーション、企業システム、データソース全体にまたがる複数ステップのタスクをフルマネージドで実行するサービスとして、Agents for Amazon Bedrockが発表された。
エージェントは、自然言語で指示を記述し、内部システムへのアクセス方法を提供し、Lambda関数を定義することで作成する。
エージェントはユーザーリクエストを分析し、基盤モデルの推論機能によりリクエストを完了するための処理順序を決定する。
Guardrails for Amazon Bedrock
生成AIを使う上では、安全性が求められる。ユースケースに応じた複数のガードレールを定義し、複数の基盤モデルに適用し、生成系AIアプリケーション全体で安全制御を標準化するサービスがGuardrails for Amazon Bedrockだ。
同サービスは望ましくないトピックを定義し、有害コンテンツのカテゴリーごとにフィルタリングする閾値を設定できる。これにより、ユーザーのクエリや基盤モデルの応答を分析し、制限に抵触するかを評価する。
プレビューが開始されたところで、現時点ではテキストベースのモデルについて、英語に対応しており、Agents for Amazon Bedrockとカスタマイズ済みモデルにも対応する。
Amazon Bedrockに最新の基盤モデルを提供
今回、以下のように、さまざまな基盤モデルの提供開始が発表された。
- Anthropic Claude 2.1 in Amazon Bedrock(一般利用開始)
- Meta Llama 2 70B in Amazon Bedrock(一般利用開始)
- Amazon Titan Image Generator(プレビュー)
- Amazon Titan Multimodal Embeddings(一般利用開始)
- Stable Diffusion XL 1.0 by Stability AI
- Amazon Titan Text Express, Amazon Titan Text Lite
「Amazon Titan Image Generator」は、有害コンテンツや誤情報の生成を回避しつつ、正確な構図と破綻の少ない画像を生成する。デフォルトで不可視の「すかし」を挿入する。