富士通は11月20日、時系列データの異常検知を行うAIモデルを自動で作成する富士通独自の「Topological Data Analysis」(以下、TDA)技術を、アメリカで精神疾患に関するソリューションを提供するスタートアップ企業「Delight Health」へライセンス供与し、同社の新株予約権を2023年11月に取得することで合意したと発表した。

Delight Healthは、同社が現在開発中の、せん妄の発症を正確に予測する検出装置を富士通のTDA技術によって確立させ、2024年までにFDA(Food and Drug Administration:米国食品医薬品局)の承認を取得することを目指すという。特に高齢者に頻発する深刻な疾患であるせん妄に苦しむ患者の救済に寄与するとのことだ。

富士通は、Delight Healthの技術者がTDA技術に関する必要な専門知識を習得するためのトレーニングを実施する。また、Delight Healthが開発するせん妄検知装置にTDAを組み込むためのソフトウェアの提供や、技術サポートなどを実施する。

さらに、日本国内の企業や日本に本社を置くグローバル企業に対して、Delight Healthが開発したライセンス製品を国内で共同販売、販売促進、頒布、その他の方法で商業化する優先的な権利を保有する。

富士通は時系列データの異常や乱れを分析できる独自のTDA技術を2020年に開発。この技術を活用した脳波データによるせん妄検知について、後にDelight Healthを創設するスタンフォード大学 医学部精神科 准教授の篠崎元氏とともに2018年7月から2021年5月まで共同研究を実施した。(共同研究当時はアイオワ大学所属)

両者はこの共同研究において、バイスペクトル脳波装置とTDA技術を組み合わせ、せん妄の発症を正確に予測するという研究成果を挙げ、篠崎氏は本成果のビジネス化を目指して2023年7月にDelight Healthを設立した。