【財務省】税収増による還元策が「偽装減税」と批判高まる

政府は11月2日、物価高に対応する総合経済対策を閣議決定した。目玉となる減税と給付措置は計5兆円超の規模で、1人あたり年4万円の定額減税に3.5兆円、住民税非課税世帯などへの給付に1兆円超を充てる方針だ。

 岸田文雄首相は「増税メガネ」との揶揄を払拭するかのように、税収増を国民に還元するとして減税措置を打ち出したが、報道各社の世論調査で内閣支持率は過去最低水準のままだ。国会でも野党から「偽装減税」などと批判が強まっており、局面打開は見通せない。

 国会審議でめったに答弁しない鈴木俊一財務相が、10月30日の衆院予算委員会で、立憲民主党の逢坂誠二代表代行の質問に応じた。

 逢坂氏が防衛費増額に伴う財源確保のための増税と今回の減税措置の整合性を巡り、「歳出改革は財源になり得るのか」と質すと、鈴木氏は「社会保障費を高齢化の枠内に抑える」として数字を列挙して説明した。

 これに対し、逢坂氏は「何を言っているのか全くわからない」と斬って捨てた上、「本来伸びるであろう予算を抑え込むから財源だと言っている。詭弁だ」とたたみかけた。鈴木氏は首相を援護射撃するどころか、野党からさらに突っ込まれる展開になってしまった。

 減税を巡る政府の発信力不足が首相への逆風になっているにもかかわらず、平時と同じ説明を続ける鈴木氏の姿勢は政権運営の足かせになっている可能性がある。自民党内からは「税は政局だ。首相や財務相が説明できなければ、『岸田政権は財務省の言いなり』という印象が強まるだけだ」(閣僚経験者)と肩を落とす。

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