「イノベーションを起こす方法」と聞けば、誰しも気になるのではないだろうか。企業や組織が成長を続けていく上で、新たなビジネス価値を生み出すイノベーションは欠かせない要素の1つだからだ。

10月12日に開催された「ビジネス・フォーラム事務局×TECH+フォーラム DX Day 2023 Oct. 変革し続けるイノベーションの作法」に、国内外で900以上のプロジェクトに関わってきたビジネスデザイナーであり、monogoto CEOの濱口秀司氏が登壇。「イノベーションについて」と題し、経営者や組織のリーダーを対象にイノベーションを促進する方法を伝授した。

イノベーションの3つの条件

冒頭で濱口氏は、講演タイトルにもある「イノベーション」と「作法」について、それぞれ定義を行った。まずイノベーションについては、対象が以下の3つの条件を満たしている時に、イノベーションとして成立する可能性があるという。

  • 1.見たことがない
  • 2.実行可能である
  • 3.議論を生む
  • 中でも濱口氏は、1つ目の条件について、脳のバイアスにより人々は「知っている」と思うと、それはもう「イノベーションではない」と考えてしまうと指摘した。そこで同氏が考案したのが「バイアスブレイク」という技法だ。これは、考え方をパターン化して視覚化した上で、それとは違う方向のアイデアを物理的につくり、それを持ち込むことで”見たことがない”ものをシステマティックにつくり出すという方法である。

    一方、作法の定義については、「プロセスというより、プロトコル」なのだと濱口氏は語る。Aをやり、次にBをやるとCに到達するといったものがプロセスであるのに対し、プロトコルは儀礼や儀式のようなものだと言う。

    「AもあればBもある中で、Cに到達する確率を高めていくものです」(濱口氏)

    これらを踏まえた上で、同氏は企画が具現化されるまでのプロセスをコンセプト、戦略、意思決定、実行という4つのフェーズに区切り、各フェーズにおける自由度とリソースの割り当てがどのように変化するのかを説明した。

    • イノベーションの位置関係のイメージ図

    コンセプトを考える段階では自由度は最も高く、リソースの割り当ては最も小さい。一方、実行段階では自由度が最も低くなるのに対し、リソースの割り当ては最も大きくなる。濱口氏は「これは間違いではない」としながらも、「自由度が高い時にがんばらず、自由度が下がってからがんばるケースがある」と指摘。そして、「イノベーションが起きるのはコンセプトのフェーズだと思われがちだが、全部のフェーズで起こり得る」と続けた。

    「コンセプトをきちんとつくり、戦略をつくり、意思決定して、実行する。全てのフェーズでふんだんにリソースをかけて、社内でコミュニケーションしながら進めること。これがイノベーションに不可欠であり、その各フェーズで適切な作法が必要です」(濱口氏)