スウェーデンに拠点を置くエンタープライズソフトウェア企業のIFSは10月31日、日本で初の開催となるフラッグシップイベント「IFS Connect Japan」を東京都内で開催した。

同イベントには、最高プロダクト責任者(CPO)のクリスチャン・ペデルセン氏、IFSラボ 副社長(VP)のバス・デ・ヴォス氏が登壇し、同社の製品戦略およびロードマップについての講演を行った。また同氏らは講演後、TECH+などの合同取材に応じ、今後どういった戦略で日本市場の事業拡大を目指していくかなどを説明した。

  • IFS CPOのクリスチャン・ペデルセン氏

    IFS CPOのクリスチャン・ペデルセン氏

  • IFSラボ VPのバス・デ・ヴォス氏

    IFSラボ VPのバス・デ・ヴォス氏

“6つの業界”に特化するIFS

1983年にスウェーデンの原子力発電所のエンジニアが創業したIFSは、製造、航空宇宙・防衛、エネルギー、サービス、建設、通信の6業種に特化し、統合基幹業務システム(ERP)と企業資産管理、フィールドサービス管理、エンタープライズサービス管理の4領域の製品を提供する。

設立から50年が経過しており、米国、北欧、南欧、アジア太平洋・中東の4地域で50カ国以上の市場に参入している。グローバルにおいて顧客数は1万社を超え、従業員数は約6000人にのぼる。2022年の収益は10億ドルに達する。日本市場には25年前に参入し、日鉄スチールや日本航空(JAL)、京セラ、クボタ、OKIなど、日本を代表するさまざまな企業が同社のサービスを活用している。

「われわれが注力している業界には、機械や設備といった『物理的な何かがある』という共通点がある。金融や保険といった業界は対象外だ。業界に精通し特化しているため、他社の製品にはない効率的な実装支援を提供できる」と、ペデルセン氏は説明した。

  • IFSが注力している6つの業界および4つの提供ソリューション

    IFSが注力している6つの業界および4つの提供ソリューション

約1500人で開発する「IFS Cloud」は何ができる?

サービスの中核となるのが4領域の製品の機能をSaaS(Software as a Service)で提供する「IFS Cloud」だ。2021年3月に提供開始されたサービスで、顧客は自社に適している機能をベストオブブリードで組み合わせることができる。SaaSだけでなくオンプレミスでも導入が可能だ。

「約1500人の開発者により、年に2回の機能アップデート、10回のサービスアップデートを行っている。とことん業界に特化していくためには、開発を終わらせることなく、常に新しい機能を模索する必要がある。AIやIoTなどの技術を積極的に活用していく」(ペデルセン氏)

  • 「IFS Cloud」の全体像

    「IFS Cloud」の全体像

同社が特に注力しているのが「コネクティッド・ファクトリー」の分野だ。MES(製造実行システム)にAIやIoTを組み合わせ、製造計画やスケジューリングの最適化、リアルタイムのマシン制御を実現する。加えて、生産設備の保守運用や監視にも活用でき、従業員の生産性の向上にもつながる。

「コネクティッド・ファクトリーではさまざまなデータが連携され、効率的な作業が実現できる。例えば、工場内のすべてのメンテナンスと発注のスケジュールを最適化したり、自走ロボットで倉庫の資材を生産ラインに自動で運べるようにしたり、AIにより設備や製品の品質低下を予測したりできる。最も投資し続けている分野で、今後も数年間にわたり投資を続けていく」と、IFSラボ 副社長(VP)のヴォス氏は意気込みを見せた。

  • ヴォス氏はデモを交えて同社が実現するコネクティッド・ファクトリーの概要を説明した

    ヴォス氏はデモを交えて同社が実現するコネクティッド・ファクトリーの概要を説明した

「われわれが実現したいことは、物理的な世界とデジタルの世界の間における“データ”のギャップを埋めること。物理的なアセットからできるだけ多くのデータをデジタルの世界に取り込み、より良い意思決定を行い、AIアルゴリズムがより良い方法で実行されるようにしていきたい」(ヴォス氏)

パートナー企業に求めること

今後、同社はどのような戦略で日本市場を開拓していくのだろうか。欠かせないのはパートナー企業との協創だろう。IFSの直近の主なビジネスパートナーはNEC、日本IBM、アクセンチュアなど。今後は国内SIerでの取り扱いを増やしてもらえるよう働きかけていく考えだ。

「パートナー企業に対して求めていることは『業界の専門性』。特に製造業への理解は必須。長らくパートナーを組ませてもらっているNECは、製造業において高い専門性と深い知識を有しており心強い味方だ。また保証プログラムも重要視しており、導入後もしっかりとパートナーと手を組んで顧客への支援を行っていきたいと考えている」と、ペデルセン氏は説明した。

さらに「グローバル展開している製造業界の大企業が多い日本はもともと相性がいい。日本市場が私たちを引っ張ってきてくれた」と日本市場の事業拡大を狙う背景を語った。「今後も顧客とパートナーのニーズに100%焦点を当て、異なるソフトウェア間に存在する障壁を壊していきたい。これは終わりのない旅だ」(ペデルセン氏)