今、多くの企業がパーパスを掲げ、企業理念の浸透や組織変革、パーパス経営の実現を目指している。三菱電機ではパーパスプロジェクトを立ち上げ、2023年2月に社内向け情報発信サイトを開設。プロジェクトの全社展開に先駆けて代表執行役 執行役社長 漆間啓氏が「マイパーパス」を語る動画を公開した。その後、役職者たちが順次パーパスを発信、10月からは従業員一人一人 がマイパーパスを考え、それをチームで共有したり、チームビルディングに活かすワークショップを行ったりする取り組みへと歩を進めている。
三菱電機はパーパスをどのように位置付け、何を実現するためにプロジェクトを推進しているのか。同社 宣伝部 グローバルブランディンググループ 兼 全社変革プロジェクトグループ 専任の椎野友広氏に伺った。
パーパスはなぜ必要か? - プロジェクトの主眼
2021年6月に発覚した、三菱電機の品質不適切行為問題。これを受け同社は2022年4月、再発防止策の推進による信頼回復のため、品質風土改革、組織風土改革、ガバナンス改革の「3つの改革」に取り組むことを発表した。そして、組織風土改革の原動力の1つとして立ち上げられたのが、国内外グループ会社の従業員約15万人を対象としたパーパスプロジェクトである。
「品質不適切行為問題を踏まえ、変わっていかなければいけないという思いと、創業から100年を経た今、時代に合わせた変化が必要であるという考えから、パーパスプロジェクトを立ち上げました」(椎野氏)
三菱電機グループのパーパスは「私たち三菱電機グループは、たゆまぬ技術革新と限りない創造力により、活力とゆとりある社会の実現に貢献します。」である。このパーパスの浸透に加え、従業員それぞれの“こう在りたい”と願う個人の志を表す「マイパーパス」を考え、パーパスを起点としたコミュニケーション施策を展開するのが、このプロジェクトの骨子となる。
同プロジェクトではまず、2023年2月に社内向け情報発信サイトを開設。真っ先にマイパーパスを公表したのは代表執行役 執行役社長の漆間啓氏だった。5月からは全執行役や事業所長など150名以上の役職者がそれぞれのマイパーパスを「リーダーたちのマイパーパス」と銘打ったコンテンツとして発信。10月からは従業員一人一人が、マイパーパスを考え、それに込めた思いを仲間と共有したり、チームビルディング促進のためのワークショップを行ったりするフェーズに移っている。
「私たちは、従業員一人一人の“こう在りたい”という志をマイパーパスと呼称しています。まずはそれを実現することで、改めて仕事に対するやりがいや、仕事を通じた成長、自己実現を図っていただきたいのです。会社のパーパスと“個”のパーパスの重なりに気付いてもらう中で、個がたくさん集まり、輪になって広がる。それがやがて活力ある会社につながっていく。これが、パーパスの必要性だと考えています」(椎野氏)
社内向けマニュアルの整備と“外部からの声”を意識したCM施策
パーパスプロジェクトの主となるメンバーはリーダーの椎野氏を含み9名だ。社内向けの情報発信に加え、パーパスについてチーム内でディスカッションしてもらうためのマニュアル整備なども行っている。
プロジェクトに対する反応について椎野氏は「ポジティブな感想が多数届いている」と語る。これまでニュースなどでしか見たことがなかった社長や執行役が従業員に向け熱い思いをマイパーパスとして語ったことで、「自分もやる気が出た」「リーダーの強い思いを感じ、自分もマイパーパスを考えてみようと思った」といった声が集まっているそうだ。
さらにプロジェクトの効果を高めるため、「ブーメラン効果やウィンザー効果を意識した取り組みもしている」と同氏は言う。その1つが9月17日から放映されているテレビCMである。
「家族や友人、取引先などの第三者から“CMを見たよ”とか“良い雰囲気の広告だね”といった声掛けをしてもらえれば、会社に対してさらに誇りが持てるのではないかと考え、外部向けの発信にも力を入れています」(椎野氏)