レッドハットは10月11日、米Red HatのCEOを務めるマット・ヒックス氏のアジア地域では初となる来訪に伴い、記者説明会を開催した。説明会には、今年7月1日に同社の代表取締役社長に就任した三浦美穂氏も登壇し、国内の中長期戦略について説明した。

国内戦略は「プラットフォーマーに徹する」

三浦氏は冒頭、前社長の岡氏から引き継いだオープンハイブリッドクラウド戦略により、日本のビジネスを加速させたいと語った。具体的には、「レッドハットのビジネスモデルを継承」「オープンソース業界への貢献と高い技術力を正しく伝える」「対話による信頼関係の構築」の3点が柱となる。

「日本では、オープンソースの技術について正しく伝えきれていないと思う。メディアや教育を通じて、正しい情報を伝えていきたい。オープンハイブリッドクラウドは変革を支える手段と思っている。顧客やパートナーがやりたいことを聞いて、寄り添って提案していきたい」(三浦氏)

  • レッドハット 代表取締役社長 三浦美穂氏

三浦氏が代表取締役社長に就任して3カ月経つが、強く感じていること「レッドハットがオープンであること」と、同氏は話した。「みんなでいいものを作っていくというカルチャーがある。また、上下の関係がなく、パッションがエネルギーとなって動いている」(同氏)

そして、三浦氏は、「提案の幅を広げ、より多くのお客様に価値を届けるプラットフォーマーに徹する」ことが、2023年から2024年にかけての成長戦略だと述べた。「当社はアプリケーションを作る会社ではない。便利で堅牢なプラットフォームを提供する会社でありたい」(同氏)

オープンハイブリッドクラウドを実現するロードマップとしては、「コアビジネスの拡大」「クラウドサービスの確立」「エッジビジネスの基礎」に取り組む。

「ハイパースケーラーやパートナーとの協業により、当社のソリューションをクラウドサービスとして提供する。その先には、エッジビジネスがある。日本では、2、3年すると活性化すると見ている」(三浦氏)

  • レッドハットの2023年、2024年の国内における成長戦略

加えて、三浦氏は同日に発表された第一生命の導入事例を紹介した。同社は基盤構築作業の自動化を目的に、レッドハットのIT自動化ソリューション「Red Hat Ansible Automation Platform」を採用。2021年にプロジェクトを開始してから、累計数百台のサーバ構築の自動化を実現したという。

プラットフォーマーとしてLinuxとモダンアプリを結ぶ

続いて、ヒックス氏がグローバルのビジネス概況について説明した。同氏はIT業界の現状について、「ハードウェアもソフトウェアも常に変化してるが、現在、ソフトウェアをさまざまな場所で構築する必要がある。また、AIが データサイエンスから機能する段階に来ている」と述べた。

  • 米Red Hat CEO マット・ヒックス氏

25年以上にわたりオープンソースソフト(OSS)であるLinuxに関わってきたヒックス氏は、「レッドハットはOSSに基づいているが、われわれはプロダクトを作らない。オープンソースの世界では、プロジェクトを作ることができ、そのプロジェクトは迅速に動き、イノベーションを育む。レッドハットのミッションはエンタープライズがOSSを使えるようにすること」と、同社とOSSの関わりについて述べた。

また、ヒックス氏は、プラットフォームビジネスについて、「どうやってLinuxをモダンなハードウェアに適用するかを理解することは難しい。よって、われわれはLinuxとモダンアプリケーションを結ぶことをミッションとしている。KubernetesコンテナプラットフォームであるRed Hat OpenShiftは、安定した基盤を提供する。インフラを管理するAnsibleとOpenShiftがコアなプラットフォームになる」と説明した。

ヒックス氏は、AIについても言及した。同社は、OpenShift上で利用可能なAI/機械学習のプロダクトポートフォリオとして、Red Hat OpenShift AIを発表している。OpenShift AIはユーザーがChatGPTにおいて独自のデータを使って、ユースケースに当てはめることを支援するものとなる。

「今後、AIをアプリケーションに持っていくことが重要になる。われわれはAIの出発点の提供だけでなく、AIがどこでも動くことを実現する。開発者が数ある選択肢を前に、OpenShift AIをプラットフォームとして選ぶことで、多くのユースケースを提供できる」と、ヒック氏は同社のAI戦略について説明した。