弥生は10月11日、同社製品のアップデートについて紹介するとともに、スモールビジネスを支える新事業ブランドとして「弥生Next」の展開を開始することを発表し、記者向けの説明会を開催した。同社は新ブランドの第一弾として、「弥生給与Next」および「やよいの給与明細Next」を10月20日から提供開始する。

説明会に登場した代表取締役社長の前山貴弘氏は、まず同社のビジネス状況について振り返った。同氏によると、2023年度の売り上げは251.4億円で、過去最高額を達成したそうだ。また、弥生シリーズの登録ユーザー数も伸長を見せており、310万を突破したという。また、同社が強みとする会計事務所とのネットワークである「弥生PAP会員」は1万2000事務所を超えたとのことだ。

  • 弥生 代表取締役 社長執行役員 前山貴弘氏

    弥生 代表取締役 社長執行役員 前山貴弘氏

弥生24シリーズ発売開始、クラウドの利便性を訴求

弥生は同社の主力製品の最新版となる「弥生24シリーズ」を10月20日に発売開始する。同シリーズは適格請求書等保存方式(以下、インボイス制度)への対応を完了しており、同制度に対応した仕訳や証憑の作成・印刷が可能となっている。また、税率ごとに消費税額を自動で集計し印刷できる。

  • 24シリーズは制度の変更にも対応している

    24シリーズは制度の変更にも対応している

なお、弥生シリーズはデスクトップ版ソフトだが、今シリーズから名称を「弥生会計24 +クラウド」のように「+クラウド(プラスクラウド)」を追加している。

この名称変更には、デスクトップが備える「スマート取引取込」や、インボイス制度および電子帳簿保存法対応の起点となる「スマート証憑管理」、データやり取りを会計事務所と行えるようになる「弥生ドライブ」などのクラウド機能を、デスクトップ版でも利用できるメリットをより強く打ち出したいという狙いがある。

  • クラウド機能をデスクトップ版でも利用できるメリットを打ち出す方針だ

    クラウド機能をデスクトップ版でも利用できるメリットを打ち出す方針だ

「デスクトップソフトでもクラウド機能を大いに使っていただけることを、これまできちんとお伝えできていなかったと反省している。お客様の声に背中を押していただいて、24シリーズからの名称変更に至った」と、前山氏はその背景を説明していた。

弥生の新ブランド「弥生Next」 - 会計データを通じた業績向上まで支援

続けて、前山氏は新ブランド「弥生Next」を発表した。このブランドの下では、「つながる、はじまる、もっといい未来」をコンセプトとして、スモールビジネス事業者の業績向上を支援するサービス群を展開するという。

新ブランドでは、これまで300万社以上で使用されてきた同社製品のデータを活用して、単なる業務効率化にとどまらない「業績向上」を支援する。同社が保有するデータとクラウド技術やAI(Artificial Intelligence:人工知能)技術を掛け合わせて、同業他社と比較した際の課題などを発見できるようにする仕組みを提供する。

将来的には、自社に近いエリアや似ている業種・業態の企業と比較して、業績の課題やその改善策を示すような機能も追加していくとのことだ。

  • 新ブランド「弥生Next」を発表した

    新ブランド「弥生Next」を発表した

大企業には経理担当の他に財務担当や労務担当がいて、日々会社のデータを活用しているが、スモールビジネスではデータ活用の専門家はおろか経理の専任での担当者すらいない場合も多い。こうした状況の解消に向けて、弥生はスモールビジネスに対し、会計データの可視化とデータを利用した価値提供を支援する。

「一部の大企業や特定のコンサルティング会社が持つデータを使うのではありません。すべての事業者が会計の必要性を理解し、会計データを分析した上で理解し、納得し、次に取るべきアクションが何かを考えられる世界を皆様と一緒に目指したい」と、前山氏は強く訴えた。

  • 弥生 代表取締役 社長執行役員 前山貴弘氏

新ブランドが目指すのは、社内外のバックオフィス業務をゼロにするだけでなく、会社の状況を容易に一目で理解できる環境を作り、さらには経営の意思決定を支えるパートナーのような存在になることだ。

新ブランドでは、起業初期の企業から小規模・中堅規模の企業に適したサービスを展開する方針。「従来の弥生製品をお使いの企業は従業員10名程度のところが多く、そのような規模のお客様に最も新ブランドのベネフィットを感じてもらえるだろう。しかし、既存製品には1000名ほどの従業員を抱える規模のお客様もいるので、業務の効率化・自動化を図りたい企業に広く利用してもらえるのでは」と前山氏はコメントした。

同社は弥生Nextブランドの具体的なサービスの第一弾として、「弥生給与Next」および「やよいの給与明細Next」を10月20日から提供開始する。両サービスともに、初年度の利用料は無料だ。

  • 弥生給与Nextとやよいの給与明細Nextを提供開始する

    弥生給与Nextとやよいの給与明細Nextを提供開始する

「弥生給与Next」は給与計算や年末調整まで行えるクラウド給与サービス。年末調整の際に発生する控除申告書業務をWeb上で完結できるため、紙での作業や人事労務担当者との確認作業、手戻りなどを効率化できる。また、従業員は給与や賞与の明細、源泉徴収票などをスマートフォンから確認できるようになるという。

一方の「弥生の給与明細Next」は、クラウド型の給与明細作成サービス。給与明細をWebで配信できるようになる。社会保険料率や法令の変更に自動で対応する。

  • 弥生給与Nextのサービス概要

    弥生給与Nextのサービス概要