BtoBビジネスが業績を向上させたい場合に、ポイントとなるのが顧客接点をどのように創出するのかということだ。認知を拡大し、関心を持ってもらってリードを獲得、そこから商談へとつなげていく流れが一般的だが、それだけでは上手くいかない場合も少なくない。

では、営業活動における一連のプロセスをどのような考え方で進めていけば良いのか。8月21日、22日に開催された「TECH+セミナー Marketing Days - 専門家とベンダーの対話~トップマーケターが語り合う BtoBマーケティング最前線~」にジャパン・クラウド・コンサルティング 代表取締役社長、ジャパン・クラウド・コンユ―ティング パートナーであり、『THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』(発行:翔泳社)の著者としても知られる福田 康隆氏が登壇。レベニューモデル設計のポイントについて語った。

レベニューモデルの初手はステージ設計とボトルネックの可視化

『THE MODEL』では、マーケティング、インサイドセールス、営業、カスタマーサクセスは、ビジネスのシードを育てるフェーズから商談化までを「分業」するのではなく、「共業」していくプロセスをモデル化し、顧客ステージに沿ってそれぞれの職種がどのような活動をしていくべきかを提唱している。1つの部門の業務範囲や、個々のミッションだけにとらわれて働くのではなく、プロセス全体で横の連携を取り、共に手を取るというイメージだ。

  • レベニューモデルの全体像

こうしたレベニューモデルを自社に当てはめて検討する際には、「3つのポイントを押さえる必要がある」と福田氏は言う。

まず、「ステージ設計を行い、ボトルネックを可視化する」ことだ。多くの場合、マーケティングやインサイドセールスといった各部門は、自部門の指標だけに目を向けてしまい、オペレーションが最適化されていない。その結果、経営側としてはどこにリソースを配分すれば良いのか分からなくなる。こうした事態を防ぐためにも、まずはボトルネックがどこにあるのかをはっきりさせなくてはならない。

そこで重要になるのが、ステージ設計と役割分担だ。まず、横軸に「認知」「関心」「検討」「購買」といった顧客行動のステージを置く。縦軸には「リード育成」や「商談」といった自社のステージと、さらにどのステージをどの部門が担当するのか、どのステージをどのチャネルで実施していくのかを置く。

  • ステージ設計と役割分担のイメージ図

つまり、横軸の「顧客のステージ」という時間軸に合わせて、自社のステージ、担当部門、チャネルがどう流れていくのかを図示するのである。

このように細分化して整理することで、ボトルネックを特定し、リソース配分の意思決定を正確に行えるのだ。

なお、こうした組織の分業体制をつくる際は、「まず全部のプロセスを営業1人だけでやることを想像するべき」だと同氏は語る。

「それはある種の理想形ではありますが、実際にはそうはいきません。そこで次は全体のファネルを見渡して、どこが手薄なのかを考えます。その手薄な領域をカバーするためには人を増やせばいいのか、あるいはテクノロジーを活用すればいいのか。そこから意思決定につなげていくのです」(福田氏)

コロナ禍でオンライン上の商談が一般化したこともあり、セールステックカテゴリーのソリューションベンダーは増加している。すでに米国では多くのセールステックソリューションがビジネスに導入されるようになっており、今後は日本にもその波が来るはずだと福田氏は予測しているそうだ。

リードではなくアカウントベースで考え、横のつながりを意識して提案する

次に重要な点として福田氏が挙げるのが、「レベニューモデルはリードではなくアカウントベースで組み立てていくべき」ということだ。

セールスマーケティング戦略では、まずターゲットとなる企業を特定し、その中で顧客を拡大していくABM(アカウントベースドマーケティング)と、まず認知を拡大し、そこから顧客を絞り込んで商談へと入るTHE MODEL型で対比されがちだ。しかし、「そうした議論はナンセンス」(福田氏)であり、対象企業がエンタープライズ(大企業)かSMB(中小企業)かにかかわらずアカウントベースでレベニューモデルを検討すべきである。

なぜなら、企業規模の大小を問わず、組織内では立場によって求めるものが変わるからだ。例えば経営層は企業としてのゴールに対するビジネス課題を見ているが、現場担当者は現場における課題を見ている。ということは、現場の課題に対して単純にソリューションを提案しても経営層には刺さらないというわけだ。

「大事なのは横のつながりを意識してソリューションを提案すること」だと福田氏は指摘する。

仮に、「売上増」というビジネス課題があるとして、その原因は必ずしも営業部門にだけあるとは限らない。マーケティングやIT、人事、法務など他の部門でも売上増に貢献できることはあるはずだ。

一方、現場メンバーはそうした横のつながりまで意識することは難しい。だから、営業現場であれば「もっと営業研修をすべきだ」とか、マーケティング現場なら「キャンペーンを打つべきだ」といった話に矮小化しがちなのである。そうした小さな現場課題にソリューションをぶつけても、大きなビジネス課題は解決しないのだ。