ソフトバンクと東芝デジタルソリューションズは9月20日、量子暗号技術であるQKD(Quantum Key Distribution、量子鍵配送)を用いた拠点間VPN通信の実証実験に成功したことを発表した。

  • 実験に用いたQKDシステム装置

    実験に用いたQKDシステム装置

両社は、東芝の独自技術で鍵の生成を高速化したQKDシステムと、Fortinetが開発したQKD対応VPNルーターを、ソフトバンクが構築したネットワーク上に導入することにより、実環境における拠点間QKD-VPNを構築し、QKD非対応の端末であっても、セキュアで高速な暗号通信を行うことに成功した。

実験では、ソフトバンクの本社と、東京都内のソフトバンクのデータセンターの間(2拠点間のファイバー距離約16km)を既存の光ファイバーを使って接続し、それぞれの拠点にQKDシステムとQKD対応VPNルーターを設置して、量子暗号技術を用いたIPsec-VPNを構成した。

拠点間をQKDシステムのみで接続した場合、暗号通信を行う機器がそれぞれQKDシステムから暗号鍵を取得する必要があるが、今回の実証実験の構成ではQKDシステムをVPN内に隠ぺいすることで、ルーターと接続した機器がQKDを意識することなくQKDを用いた暗号通信を行うことを可能とした。また、IPsecで用いられるAESの共通鍵としてQKDで生成した鍵を利用することで、高速な暗号通信を実現したという。

ソフトバンクと東芝デジタルソリューションズは今後、今回の実証実験で得られた知見をもとに、量子暗号技術の実用化に向けた課題の改善や開発を進めていく方針だ。

  • 今回実施した実証実験の構成

    今回実施した実証実験の構成

なお、今回の実験は、QKD対応VPNルーターのFortiGateを用いて実施した。FortiGateを展開するフォーティネットジャパンの社長執行役員・与沢和紀氏は、次のようにコメントしている。「ソフトバンクと東芝デジタルソリューションズによる、QKD通信実証実験において、弊社のFortiGateを使って成功されたことを大変喜ばしく思います。量子コンピューティングにより、公開鍵暗号(RSA)のリスクが指摘されている中、QKDはサイバーセキュリティーに取り組む弊社としても積極的に参画していくべき技術領域だと認識しています。Beyond 5G/6G時代において、新しいスマートな社会インフラや生産手段が整備されていくものと考えていますが、新たな社会をさまざまなサイバー攻撃から守るために、フォーティネットはソフトバンク、東芝デジタルソリューションズと協力して、QKDの実用化をサポートしていきます」