AIを利活用したサービスによる社会課題解決に取り組むエクサウィザーズはこのほど、さまざまなクライアント企業・パートナー会社と協力して先進的なDXの取り組みを紹介するイベント「ExaWizards Collaboration Day」を実施した。

本稿では、同イベントにおいて、「DXアセスメントの全社員受検で得られた示唆とDX人財育成戦略への活用」というテーマで、大鵬薬品工業株 デジタル・IT統括部 ビジネスデザイン課今岡忠氏が行った講演の模様を紹介する。同社が求めるDX人財とはどのようなものなのだろうか。

「DXG人財マイニング」とは

大鵬薬品では、社長から「DXG人財マイニング」という同社が求める人財像の発信が早期に行われた結果、社員への浸透が早かったという。

この「DXG人財マイニング」という言葉に表される意味は以下の通り。

D(Digital)人財:デジタルを導入する人財
X(Transformation)人財:変革を企画する人財
G(General)人財:デジタルを使いこなす人財

D人財は、データ分析能力やAI実装力、質問力、協業する力、翻訳力、分かりやすく伝える力といったことが重視され、X人財ではビジョン構想力や提案力、発信力などが重要視されるという。

そして、D人財とX人財の両方の素養を持ち合わせた人財のことを「DX人財」と定義している。また、G人財ではDXのマインド・興味やDXコアリテラシーが重視されている。

このような人財の育成を進める大鵬薬品では、全社DX人財育成プログラムとして「DIA(デジタルイノベーターアセスメント)」と「DX e-learning」を活用している。

「DIA」は、エクサウィザーズが提供するデジタルスキル標準に完全準拠したDX人材アセスメントで、「DX e-learning」は同じくエクサウィザーズが提供する3カ月でDX人材を育てるためのe-learningサービスだ。

「弊社では、全社員に対してDIAアセスメントによる現状分析を行い、DigitalとInnovativeの2軸でスキルと素養を可視化しました。また、リテラシーを向上しマインドを醸成するDX e-learningによる学習を希望者約1600名に提供することで、社内のリテラシーが向上し、DX推進への大きな一歩となりました」(今岡氏)

  • ,大鵬薬品工業 デジタル・IT統括部 ビジネスデザイン課 今岡忠氏

    大鵬薬品工業 デジタル・IT統括部 ビジネスデザイン課 今岡忠氏

また大鵬薬品では、社内人財のトランスフォーメーションにおいて「DXG人財の指標」も用意している。2022年までは、こうした人財の定義はなかったが、2023年に入ってからDXG人財を定義し、時間をかけて全社員をこのような人財にシフトしていくことを狙っているとのことだ。

実務とデジタルスキルを組み合わせて成長を促す

続いて今岡氏は、「DXスキルアセスメントの結果から得られた示唆」を紹介した。

「それぞれの項目にボーダーの点数を決め、全社員のDXスキルアセスメントを分析した結果、2割の社員がDXGのいずれかに該当するとの結果が得られました。併せて行ったデジタルスキルの分析結果からは、高いデジタルスキルを持つ人財が極めて少ないということが分かりました。得点階級別の年齢構成では、50代以上の割合は反比例することも分かっています」(今岡氏)

しかし、「年齢が若い方がデジタルスキルを得やすい」というわけではなく、「ある程度の若さ」と「ビジネスでの経験」の両方があわさった、30代~40代のスコアが最も高くなっていることから、積極的にデジタルスキルとビジネスの機会を結びつける必要があると今岡氏は語った。

最後に今岡氏は、「DX人財育成戦略への活用」について説明した。

「弊社では、DXG人財に対して実務を組み合わせることで、社員の成長や会社としての成果につながるのではないかと考えています。そこで、デジタルスキル標準の内容を元に、X人財では『ビジネスデザイナー』や『ビジネスアーキテクト』、D人財では『データサイエンティスト』や『ソリューションアーキテクト』といった役割、ロールを用意しています」(今岡氏)

具体的に「ビジネスデザイナー」は、DXビジョンを示し各機能の変革を率先する役割を担い、「ビジネスアーキテクト」は、DX案件をリードし成果を創出する部分を担当する。

そして「データサイエンティスト」は、データ分析基盤の構築やデータ分析・可視化、「ソリューションアーキテクト」は、最先端のデジタルを活用し成果を創出することを担うという。

  • ,デジタルスキル標準を参考としたDXG人財の役割

    デジタルスキル標準を参考としたDXG人財の役割

講演の締めに今岡氏は今後の展望を語った。

「これからはアセスメントとe-learningを活用し、DXG人財の発展的な研修へ誘導していきたいと考えております。具体的には、『アイデア創出・実践プログラム』や『DX業務へのアサイン』、『社内や大塚グループ内勉強会の活用』、『データサイエンス研修の実施』などのコンテンツを実施予定です」(今岡氏)