デロイト トーマツ グループは8月8日、世界各国のコンタクトセンターを対象に、現在の課題への対応指針と今後数年間のビジネス動向をまとめた「2023 グローバルコンタクトセンターサーベイ」を公開した。
同調査はデロイトが2013年以降隔年で行っており、2019年度より日本企業も対象として調査している。今回のレポートは、世界の多様な業界のコンタクトセンター幹部を対象に2022年11月から2023年2月、様々な変化に対して将来の方向性に関する考察を得ることを目的に実施した調査した結果に基づく。
コンタクトセンターにおける最重要戦略として、日本企業および海外企業はともに、「顧客体験(CX)向上」を挙げており、日本企業における割合は前回調査(45%)を上回る63%となった。投資重要領域として日本企業は「セルフサービスの拡大」(38%)や「インフラ刷新」(31%)、「チャネル拡大」(14%)が占め、傾向として自己解決率向上に寄与する施策が目立つ。一方で、米国を中心とした海外企業では「オペレータ支援機能の導入」(11%)への投資を拡げており、「オペレータ=人」への投資は日本と海外で大きく差異がある。
日本企業・海外企業を問わずグローバルの傾向として、企業はマルチチャネル化を進めており、特に、コロナ禍を経てセルフサービスの導入が拡大した。前回調査(2021年)時点と比較し、問合せ全体に占める電話チャネルの割合は 日本58%、海外57%といずれも低下した。海外では電話チャネル縮小が減速しており、新たな手立てを講じなければ日本でも電話比率が下げ止まるリスクがあると同社は指摘する。
国内コンタクトセンターにおけるAI導入済企業の割合は海外44%、日本49%とともに2年前と比較して大きく伸びている。しかし、AIの主要用途であるチャットボット・ボイスボットについて、約半数のコンタクトセンターが十分な効果を発揮できていないと回答。生産性向上に加え、顧客との関係構築や新たな顧客体験提供等、AI活用への期待は高まっているものの、使い方の巧拙が課題になっている。
デロイト トーマツ グループ パートナーの住川誠史氏は、日本企業のコンタクトセンターは海外企業と比べて「オペレータ=人」への投資に渋りが見られ、人の代替でなく人の力を最大化するテクノロジーへの投資を強化すべきだと指摘。AI導入の成果を創出するためには「価値が増大するユースケースの選定」「KPI設定と評価」「業務変革」「テクノロジーと人材の融合」「チェンジマネジメント」という5つのアクションを着実に実行することが肝要であると述べている。