スキルギャップは世界的に重要な課題だ。組織はどのようにスキルギャップに向き合い、埋めるための取り組みを進めるとよいのだろう?
スキルギャップが解消されない理由
英国では、企業の3分の2が目標達成に必要なデジタルスキルが不足しているという。社内のデジタルスキルとビジネスの成長には相関関係があり、経営幹部の83%が自社の成功にデジタルスキルが影響していると認めているという。
一方で、92%が自社のビジネスに新しいスキルがすぐにでも必要と述べているとのことだ。デジタル人材不足と言われて久しい日本と同じような状況と言えるだろう。
デジタルの重要度が高くなり、スキルギャップが指摘されている。スキルギャップは新しい問題ではないのに、なかなか解消されないのは何故か?これには、4つの理由があると分析されている。
1つ目は時間とリソース。スキルを習得する時間とコストがないというもので、ここ1~2年の景気後退がさらに事態を悪化させているという。
2つ目は技術革新のスピードが加速していること。例えば生成AI、1年前はこれほど話題になっていなかったはずだ。
3つ目はノウハウ。スキル習得の有効な手段がトレーニングと教育であり、移行期間はデジタル人材を起用しながら既存の従業員のスキル習得をする必要がある。「自社は、戦略的目標を達成するために優れたトレーニングを展開している」とする経営幹部は43%に止まっているという。
4つ目は従業員の抵抗。人は変化を嫌がるものだ。では、スキル習得のための学習・能力開発(L&D)をどのように進めるべきなのだろうか?
L&Dの進め方
まずL&D戦略をビジネスの戦略と連携させる。トレーニングをサイロで行うのでなく、透明性を持って部門間で協力しながら行い、職務と全体の業務パフォーマンスに最大の効果をもたらすようなトレーニングプログラムを導入する。
次に、L&D担当者と上級管理職のコラボレーションを行う。これにより、必要な投資を確保し、エンゲージメントを高めることができるという。また、従業員のモチベーションを高める工夫もポイントだという。自分のキャリア目標や個人の能力開発に合うようにプログラムを調整することが有効だという。表彰制度、昇進などのインセンティブも検討すべきとしている。
併せて、従業員のフィードバックを得ること、結果を追跡・測定することなども重要だとしている。導入前に、長期的なビジネス指標を含むKPIを設定しておくとことが望ましいという。
技術トレンドを追い求めるのはいいことではあるが、それにより即効性があり実質的なメリットをもたらす従業員トレーニングがおろそかになることが多いと警笛を鳴らしている。最先端の技術よりも、現実世界の適合性を優先させる方がリソースを効果的に使うことができる、とアドバイスしている。
英国のマーケティングテクノロジー情報サイトであるMarTech Seriesが「The Digital Skills Gap - Why It Exists and How Solving It Accelerates Business Success」として、課題と解決へのアプローチを分析している。