Snowflakeの勢いが止まらない。今年6月に開催した自社イベント「Snowflake Summit」では、データアプリケーション戦略を打ち出し、生成AIでNvidiaとの提携も発表した。
Summitの会場で、Snowflakeを共同創業したプロダクト担当社長のBenoit Dageville氏に話を聞いた。
約10年前にSnowflakeを共同創業したが、どのような課題を解決したかったのか?
Dageville氏: Snowflakeはクラウドの伸縮性や柔軟性とデータウェアハウスを組み合わせた単一のシステムを構築し、マネージドサービスとして提供するところからスタートしました。
創業は2012年、Oracleでコアのデータベース製品のデータベースアナリティクス分野に携わっていたThierry(Thierry Cruanes氏、現在SnowflakeのCTOを務める)と共に立ち上げました。
当時、2つの大きな流れがありました。1つはクラウド、もう1つはHadoopをはじめとしたビッグデータの潮流です。
Larry(Oracleの創業者兼CTOのLarry Ellison氏)は当時、クラウドに乗り気ではありませんでした。Larryは大体において正しいのですが、これについては間違っていると思っていました。
ビッグデータ分野では、Hadoopが当時人気でしたが、解決しようとする問題は正しいものの、技術としては良くないと感じていました。Hadoopは非常に複雑で、トランザクションのために多くの犠牲を払う必要があります。SQLサポートもなく、とにかく遅い。
そこで、Snowflakeは完全にセルフサービスで、データについてやりたいことができる地球上で最もシンプルなソリューションを構築することを目指しました。半構造化データをサポートし、ペタバイト級のスケールを可能にするアーキテクチャを構築しました。ボタンを押せばスタートし、データを読み込み、そのデータを問い合わせることができます。
当時、大手企業はデータウェアハウス(DWH)として、Teradataを使っていました。Oracleは打倒Teradataを試みていたこともあり、われわれもTeradataからSnowflakeにデータをマイグレーションして、高速に動かすことができるかどうかを最初のベンチマークにしていました。
そして、データクラウド「Snowflake」は2014年にGAを迎えました。
現在、データクラウドから戦略を拡大しているが、その狙いは何か?
Dageville氏: GAを行った後は、コラボレーションとグローバルに取り組みました。
Google Docsが登場した時、コラボレーションが簡単にできることに驚いたと思います。ドキュメントを添付して渡すのではなく、自分のドキュメントのアクセス権を仲間に与える。これがクラウドの力です。次に、ペタバイト級でスケールするデータに対して同じことができるようにしました。そうして、2016年にコラボレーション機能を実現しました。
その後、データのサイロという課題を受けて、単一のSnowflakeというビジョンを立てました。グローバルであり、AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなどをサポートするマルチクラウド環境で、リージョンをまたいで利用でき、ディザスタリカバリー対策を取ることができる。Snowflake上に構築すれば、データのポーティングを考える必要はありません。
その次の大きな取り組みとして、現在ここ2年前から取り組んでいるのが、Snowflakeにあるデータを、データアプリケーションに変革すること。データアプリケーションとは、データとAIを活用したアプリケーションです。ポイントは、データを動かすのではなく、ワークロードをデータに近づけること。
Snowflake Summitでは、「Snowflake Native App Framework」を発表しました。データ、ロジック、機械学習モデルを組み込んだネイティブアプリケーションを構築して公開できます。これは、提供者と利用者の両方にとってwin-winの関係といえます。提供者はコードやデータをエクスポーズする必要はなく、利用者は自分たちのガバナンスを効かせて動かすことができます。提供者側がアプリの利用者のデータにアクセスすることはできません。
Summitではまた、AIや機械学習モデル、ロジックなどを組み込む「Snowpark Container Services」も発表しました。データアプリケーションで重要な役割を果たす機能となります。
データクラウド、コラボレーション、そしてデータアプリケーションと拡大してきた次の方向性はどのようなものか?
Dageville氏: われわれのフォーカスは常にデータにあります。データクラウドなので、インフラはクラウドプロバイダーを活用することになりますが、統合された形でサービスを構築します。そして、できるだけシンプルに、数日、数時間でSnowflakeのデータクラウドでアプリケーションを構築できるようにします。
方向性として例えるなら、iPhoneになります。データクラウドとiPhoneは全く関連性がないようにみえますが、シンプルさ、優れた体験という点では類似しています。
Native AppとMarketplaceにより、Snowflakeのデータクラウドにアプリケーションを構築すること、それを配布すること、マネタイズすることを簡単にしていきます。インフラ部分の複雑さを考える必要はありません。iPhoneのApp Storeと同じような役割です。Amazon(AWS)にもMarketplaceはありますが、クラウドの移植性はありません。
クラウドとiPhoneが今後のわれわれの方向性といえます。