デロイト トーマツ コンサルティングは7月25日、企業と個人を対象に、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代の人材育成の実態と課題を探った「デジタル人材育成に関する実態調査2023~人的資本経営時代に取り組むべきリスキリングとは~」の調査結果を発表した。潜在デジタル人材の割合36%で、企業のデジタル研修は一定進んでいるものの「実践の場」の提供が課題となっていることが明らかになった。
同調査では、252社を対象にDXの取り組みや人材施策・育成などについて問い、DX銘柄企業(23社)とDX認定企業(26社)の49社を「DX先行企業」、ほかの203社を「一般企業」として分析。デジタル人材(4,103人)と非デジタル人材(2,284人)からデジタル業務への関与意向やリスキリングの意向・課題感などを探った。
企業に対する調査では、育成・研修施策を推進している実施率は一般企業で46%、DX先行企業で87%と高いが、育成・研修の前提となる「経営ビジョン」は一般企業26%、DX先行企業66%、「人材ニーズの定義」は一般企業26%、DX先行企業50%、「育成計画」は一般企業25%、DX先行企業68%、学びを活かす「実践機会の提供」は一般企業31%、DX先行企業71%と、いずれも一般企業の実施率がDX先行企業よりも大きく下回った。
DX先行企業においても、学びを促進する「コミュニケーション」は18%、評価や報酬に紐づく「人事制度」の整備は8%にとどまり、学ぶ「動機づけ」につながる施策まで着手できていない企業が大半であった。
デジタル人材育成施策の課題を感じている項目は、一般企業が「経営ビジョン(45%)」、「育成計画(57%)」と「育成・研修」より手前の施策に課題を感じる割合が高い。DX先行企業においては、「実践機会の提供(53%)」や「人事制度(47%)」といった「育成・研修」後の施策についての課題認識が高い。
特に「実践機会の提供」においては、DX先行企業の71%が既に着手している一方で、依然、課題を抱えている企業も多い。また、一般企業、DX先行企業ともに「育成・研修」を実施している企業においては、制度導入をしてもその内容にはまだ改善の余地があると考えている割合が高い。
全体の9割以上の企業がDXを検討・推進しているが、多くは業務効率化にとどまっている。一方で、DX先行企業は「新規製品・サービスの創出」92%、「既存製品・サービスの付加価値化」76%といった付加価値向上目的に加え、「企業文化・組織マインドの根本的な変革」といった従業員を対象とした変革にも76%が取り組んでおり、一般企業との差異が表れている。
個人に対する調査は、エンジニアやデザイナー、ビジネスプランナーなど、デジタルに関する14職種の経験がある人を「デジタル人材」、当てはまらない人を「非デジタル人材」と定義して分析。その結果、日本の就業人口約3,000万人のうちデジタル人材は254万人と推計されたという。
非デジタル人材のうち、「デジタル領域関与意向」と、デロイト独自のデジタルリテラシーアセスメントにおける「マインドスタンス」レベルの2軸から9つに分類し、両軸が「中」レベル以上の層を、デジタル人材になりえる「潜在デジタル人材」と定義して分析した結果、潜在デジタル人材は、非デジタル人材の36%と推計された。
デジタル技術の発展に伴い必要となるスキルを個人が習得する意味での「リスキリング」意向者は、デジタル人材では69%となっている一方、非デジタル人材では32%にとどまり、中でも非デジタル人材の半数近くがデジタル分野のリスキリングに関して課題を感じていない状況であった。
また、リスキリング意向者における課題については、必要なスキルや学習方法の明確化、トレーニング機会や時間確保、キャリアに活かせる機会不足が上位となり、デジタル人材を拡大する上では学びに対する個人の準備や動機づけを促進する必要があるとデロイトトーマツはみている。