米Dropboxの日本法人であるDropbox Japanは7月11日、記者発表会を開き、6月22日に発表したAI(人工知能)を搭載した検索ツール「Dropbox Dash」について説明した。
Dropbox Dashは、ツール、コンテンツ、アプリを1つの検索バーでつなげるAI搭載型のユニバーサル検索機能。Google Workspaceや、Microsoft Outlook、Salesforceなど、企業で広く利用されているサービスと連携し、仕事で必要な情報を1つの検索バーで見つけることができる。
同機能により、コンテンツの共有や、会議の参加、共有されたプレゼン資料を探すために、アプリケーション間を行き来する作業を省略できる。また、機械学習を採用しており、使えば使うほど学習し、検索結果が改良されるという。
記者発表会に登壇した米Dropbox プロダクトデザイン ディレクターのデヴィン・マンキューソ氏は、「ChatGPTをはじめとした大規模言語モデル(LLM)を活用したAIテクノロジーの進化はすさまじく、無限の可能性が広がっている。しかし、LLMにおいて、『あのプロジェクトの資料はどこだろうか』、『今年の戦略プランは誰が作成したのか』、『コーポレートクレジットカードの情報が欲しい』といった質問にはなかなか答えられない。こうした質問に答えるために必要なのは、ユーザー情報やユーザーの会社の情報にパーソナライズされたAIだ」と、Dropbox Dashの必要性を説明した。
同社の調査によると、仕事をする上で必要なファイルやコンテンツを探すという作業に、ナレッジワーカーは週に8.8時間を費やしていることが分かった。また、69%のナレッジワーカーが「1日に60分もアプリ間の移動に時間を使っている」と回答している。「平均的なユーザーは、アプリやWebサイトを毎日約1200回切り替えている。仕事のための仕事が多い」(マンキューソ氏)
Dropbox Dashは、この「仕事のための作業時間」を削減するために開発された機能だ。ユニバーサル検索に加え、2つのブラウザ拡張機能がある。「Stack」は、URLの保存や整理、取得が行える機能。「ファイルにはフォルダが、曲にはプレイリストがあるように、Stackはクラウドコンテンツを共有できる、整理されたレイヤーを提供する」(マンキューソ氏)としている。
もう一つのブラウザ拡張機能「Start Page」は、Dropbox Dashへのアクセス、Stackの表示、最近作業していたコンテンツへのショートカット、ミーティングの開始などができるダッシュボードを提供する。
同社は今後、ユーザー情報やユーザーの会社の情報をもとに、生成AIを使って質問に答えたり、関連コンテンツを表示したりする機能も追加していく考え。例えば、創立記念日などの特別休暇がいつなのかを知りたいとき、社内のリンクやページを探し回るのではなく、Dropbox Dashに質問すれば解決できるといった体験を提供する。
また、同社はすでに、Dropboxに保存したファイルを要約したり、ファイルに関する必要な情報をすぐに入手できたりする「Dropbox AI」を提供している。DropboxのWebアプリ機能の中でも最もトラフィックの多いという「ファイル プレビュー」にAIを適用した。現在は米国のみで提供しているサービスだ。
Dropbox AIは、クリック1つで契約書や会議の記録などのコンテンツを要約する。そのため、ユーザーはファイル全体を確認しなくても内容を把握できる。また、質問するだけで、数秒以内に回答が得られるため、大容量のファイルを探す手間が省ける。「これらの機能は始まりに過ぎず、フォルダやDropboxアカウント全体でDropbox AI を利用できるようにしていく」(マンキューソ氏)
AIを最大限に活用していく計画の同社だが、「常に顧客がデータを管理できるようにする」、「AIの使用方法について透明性を保つ」、「AIテクノロジーにおける公平性を擁護する」といった原則をしっかりと定めている。
マンキューソ氏は「AIの新機能を市場に導入するとき、顧客のセキュリティとプライバシーを最重視している。AI技術のバイアスを制限し、できるだけ公平で信頼性の高い製品や機能を開発することがこれまで以上に重要だ」と述べていた。