東京商工リサーチは7月10日、2023年6月までに発生した「人手不足倒産」について調査・分析を行い、その結果を発表した。今回の調査によって、賃上げが話題になる中、中小企業には「人件費高騰」が深刻な打撃を及ぼしていることが判明した。

2023年上半期(1-6月)の「人手不足」関連倒産は67件(前年同期比139.2%増)で、前年同期の(28件)の2.3倍に急増した。

  • 人手不足関連倒産(上半期)引用:東京商工リサーチ調べ

上半期では、調査を開始した2013年以降、人手不足が深刻だった2019年の82件に次ぐ、2番目の多さとなった。特に、前年同期は発生がなかった「人件費高騰」が24件と急増した。賃上げ機運が高まるが、収益力が乏しい中小企業には、人件費アップが資金繰りに大きな負担となっているという。

産業別では、運輸業の19件が最多だった。これに、サービス業他18件、建設業13件と続いている。運輸業やサービス業のほか、建設業などの労働集約型産業は慢性的な人手不足に陥り、「人手不足」関連倒産が他産業に比べ際立っている。

資本金別では、最多が1千万円以上5千万円未満の26件だったが、1億円以上も7年ぶりに1件と、人手不足が大きな経営課題に浮上している。

要因別は、最多が「求人難」の27件(前年同期比58.8%増、構成比40.2%)で、2年連続で前年同期を上回った。20件を上回ったのは、2020年同期(26件)以来、3年ぶり。

次いで、「人件費高騰」が24件(前年同期ゼロ、構成比35.8%)、調査を開始した2013年同期以降、2015年同期の17件を超え、最多を記録した。また、「従業員退職」は16件(前年同期比45.4%増)で、4年ぶりに前年同期を上回った。

コロナ禍の急激な市場縮小で、上場企業は早期退職を募集するなど人余りが出現した。だが、経済活動が本格的な再開に動き出すと、コロナ禍で流出した人材は賃金や労働条件が恵まれた企業に流れ、中小企業で人手不足が深刻になっている。

人材確保と従業員の定着には賃上げが不可欠だが、資金余力が乏しい企業では人件費上昇が資金繰り悪化を招き、「人件費高騰」による倒産が急増したとのことだ。

  • 人手不足関連倒産(要因別)引用:東京商工リサーチ調べ