2023年6月21日から6月23日にかけて、東京ビッグサイトにて「日本ものづくりワールド 2023」が開催されている。同展示会は10の専門展で構成されている製造業向けの展示会となる。
そのうちの「設計・製造ソリューション展」ではNECがブースを出展し、大量の画像による事前学習が不要なAI映像解析ソリューションを参考出展していたので紹介する。
1枚~数枚の画像で製品や人のポーズをAIが学習
NECは同展示会で参考出展した製品が「NEC ものづくりDX映像AI分析ソリューション」だ。同製品では製造現場のライブ映像や録画した映像から、AIが人の姿勢や製品などの物体を検知し、人の作業実績を収集することができる。
従来のAIによる映像分析ソリューションでは、特定の製品や人の姿勢を学習する際に数百枚の画像が必要だった。今回の製品ではNECが独自開発したAIやOSS(オープンソースソフトウェア)のAIなど複数のAIが利用されており、1枚~数枚の画像で特定の製品や部品、人の特徴的な姿勢やポーズを学習させることができるという。
人が作業する際の角度や、工場で使用しているカメラの設置位置や画角によって、AI学習に必要な画像の枚数が異なるそうだ。製造現場で一般的に使用される工具や、立位や座位などいくつかの姿勢はあらかじめ登録されているため、ユーザーは特徴的な姿勢や製品などを追加で学習させればいい。
展示ブースでは、デモ映像で同製品のユースケースが紹介されていた。例えば、作業台の特定のエリアに製品が置かれたら作業時間の計測を開始し、完成品を指定位置に置いたら作業終了時間を記録するなど、同製品は作業者の作業時間実績収集に活用できる。
このほか、あらかじめ特定のポーズをAIに学習させておくことで、作業中の異常検知にも利用できる。例えば、異常発生時にカメラに向かって作業者がポーズをとると、AIが作業者の骨格を検知して管理者にアラートを送信するといった使い方もできるそうだ。
今後は製品を検知するエリアの指定や人の姿勢の登録、AIの画像認識率などの設定をユーザー自身が操作できるようなGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を実装する予定だという。
すでに、ある製造業の企業と同製品の導入検討のための実証実験が決まっているそうだ。同企業では、製品の組み立てを行うセル生産において、初心者と熟練者の間で作業時間に約2倍の差があることから、その理由を判明して作業効率化に生かすためにAIによる映像分析を活用する。
スマホ持ち込み不可の環境で役立つ自販機の顔認証決済
同展示会では、NECが2023年4月24日発表した顔認証技術を自動販売機(自販機)の決済に活用できるサービスのデモが展示されていた。
同サービスは顔認証決済を行うためのクラウドサービスと、顔認証決済アプリを搭載したタブレット端末を提供するもので、新設自販機だけでなく既存自販機にも導入可能だという。
自動販売機で顔認証決済を行うために、ユーザーは氏名、自分の顔画像、決済時に使用する4ケタのパスコードとクレジットカード情報を専用Webサイトで事前登録する必要がある。なお、それらの登録は、自動販売機に備え付けられたタブレット端末に表示されるQRコードを読み取って行うことも可能だ。
飲料を購入する際にはまず、商品を選んで、自動販売機に備え付けられたタブレット端末の顔認証で本人確認を行う。
本人確認が完了すると、タブレット端末で4桁のパスコードの入力が求められる。コードを入力することで、事前登録したクレジットカードによる決済が完了するという仕組みだ。
NECは一般に普及している自動販売機の決済利便性を高めるだけでなく、工場などの製造現場や研究所といった、スマートフォンや交通系ICカードなどの決済手段を持ち込めない施設における就業環境の改善に向けて同製品を企業に提案していくという。