メンズスキンケアEC市場が活況だ。スキンケアを行うことが習慣化しているZ世代だけでなく、50代以上のミドル層のニーズも高まっているという。メンズスキンケアのヒット商品が続々と生まれているようだ。ある大手化粧品OEMメーカーによると、コロナ以降、オンライン会議が定着したことにより、自分の顔を意識して見たり、同年代と比べて見る機会が増えたという。こうした変化が、ミドル世代のスキンケアニーズが高まる要因となっているようだ。
【インタビュー】ワイシャツEC「ozie」柳田敏正さん(52)「スキンケア歴7年 同年代と全然違うと実感」
▲ワイシャツECの「ozie」を運営する柳田敏正さん(52)
ワイシャツのECサイト「ozie(オジエ)」を運営する柳田織物の柳田敏正社長は、スキンケアを始めて7年になるという。毎日、朝と夜に必ず、肌の乾燥ケアのために、「ETVOS(エトヴォス)」の美容液を使っているという。柳田さんは、「スキンケアをしていない同年代と比べても、若々しさが全然違うと実感している」と話す。柳田さんに、スキンケアの習慣や、成果を実感するタイミングについて聞いた。
――スキンケアを始めたきっかけは何ですか?
7年ほど前に、経営者の知り合いに薦められるがままに、スキンケアを始めてみました。それまでは、同年代の普通の男性と同じで、スキンケアと呼べることは全く何もしてきませんでした。
ただ、スキンケアを始める前にも、年齢を重ねるにつれて、肌が乾燥してきていることに気付き始めていました。石けんで顔を洗うと、肌がひどく突っ張る感じがしていたのです。
まずは、肌の乾燥をケアするために、スキンケアを始めました。スキンケアを始めてからは、自分以外の人に会ったときに、肌が乾燥しているかどうかを気にするようになりました。肌が乾燥している人は、乾燥していない人に比べて、老けて見えることに気付いたのです。
それ以来、継続してスキンケアをする様になりました。多くのミドル世代の男性の肌悩みは、「乾燥」がほとんどだと思います。オイリー肌の人ももちろんいると思いますが、「乾燥」をケアすることで、若々しさを保つことにつながると思います。
――使用しているスキンケアの商品は何ですか?
「ETVOS(エトヴォス)」というブランドの集中保湿美容液「モイスチャライジングセラム」と「リンクルセラム」という商品を使っています。乾燥のケアと、目元のシワとほうれい線が気になるので、シワをケアする美容液を使っています。
どちらも女性用の化粧品です。
――スキンケアの習慣は負担になっていませんか?
朝と夜にかかさず使用していますが、それぞれ数滴を手に付けて塗るだけなので、時間は1分もかかりません。毎日続けないと効果はありませんから、会食などで帰りが遅くなっても、忘れないようにしています。風呂に入ったり、歯を磨いたりするのと同じです
――スキンケアをしていて、最も変化を感じたのはどんな時ですか?
先日、前職時代の同期の男女数人で集まったのですが、周りの反応が全然違いました。化粧品メーカーに勤めていた友人も、私の肌が若く見えることを指摘してくれました。自分でも、同年代の人が自分よりも老けて見える気がしています。
私がスキンケアを始めたのは45歳の時でした。男性の多くは、おそらく40代後半まで肌トラブルに気付くことはないと思います。45歳を超えると、肌も含めて、体の不調を感じることが多くなります。早目に、継続的にケアしておくことが重要だと思います。
これからスキンケアを始めようと思っている男性も、おそらく、何から始めたらいいか、基準が分からない人が多いと思います。肌トラブルは人それぞれだと思いますが、ミドル世代の男性はおそらく、肌の「乾燥」を感じている人が多いと思います。乾燥ケアや、紫外線ケアを続けるのが良いのではないでしょうか。
【インタビュー】映像制作会社 役員 山田博之さん(46)「健康意識の高まりがきっかけ 『今日もできた』がモチベーションに」
映像制作会社で執行役員を務める山田博之さんがスキンケアを始めたきっかけは、40代半ばに差し掛かって高まっていた健康意識からだったという。「10年後の自分が後悔しないように、食生活のケアとセットでスキンケアを始めた」と話す。今では、毎日スキンケアを続けるよう心がけており、「今日もスキンケアした」と思うことが、プチ満足感と自信につながっているという。
▲山田博之さん(46)
<健康ケアの話題が増える>
――どんなことがきっかけでスキンケアを始めましたか?
私は46歳ですが、同年代の友人や同僚と話していると、健康を意識した話題が増えてきました。「普段の食生活で、油物を控えたり、魚料理を増やしたりしたほうがいい」といった話題です。
今まではスキンケアは、冬場の感想が気になったときに、コンビニでそれらしいものを買って、その時ケアするだけでした。継続的にスキンケアすることに興味もありませんでした。
健康意識が高まるにつれて、年齢による肌の衰えも意識しないと、10年後の自分が後悔してしまうのではないかと考えました。
<サントリーの「VARON」>
――どんな製品を使っていますか?
サントリーウエルネスの「VARON(バロン)」という商品です。2022年の10月から使っています。
私は、夜も朝も風呂に入ることが多いので、風呂上がりに使用しています。私が使用している「Fresh(フレッシュ)」というタイプは、ネバネバでもなく、シャバシャバでもなく、粘度がちょうどいいので、付け心地がとても気に入っています。数プッシュ手に付けて顔に塗りますが、余ったら首元などにも付けています。
<肌ケアが健康ケアに>
――商品を使っていて何か良かったことはありましたか?
まだ使い続けて半年なので、周囲の目が変化しているかまでは分かりません。「肌ツヤがいいね」とは言われるようになりました。
自分の中で良かったことは、継続してスキンケアできていることで、「今日もケアできた」というプチ満足感が生まれるようになったことです。スキンケアを続けていると、食生活などの他のこともケアする意識が生まれてきます。スキンケアを続けることが、さまざまな健康ケアのモチベーションにつながっていると思います。
今でも、飲み会の日などは忘れることもありますが、習慣化できているので、忘れる回数は少なくなってきました。忘れてしまった日は、翌日念入りにケアするようにしています。
【注目ブランド】サントリーウエルネス「VARON」、売上が計画比3倍のヒット 「ウイスキー樽エキス」配合の男性化粧品
健康食品通販最大手のサントリーウエルネスが展開している男性向けオールインワン化粧品「VARON(ヴァロン)」は、発売当初の計画の約3倍を売り上げるなど、ヒット商品となっている。「ウイスキー樽材エキス」や「ウーロン茶エキス」など、飲料メーカーのサントリーをイメージしやすい素材を配合していることも、ヒットの要因になったという。
「VARON」は、40代以上のミドル・シニア層の男性向けのオールインワンスキンケアだ。ウイスキー原酒の熟成樽に用いられるスパニッシュオーク材から抽出した、独自の「ウイスキー樽材エキス」を配合している。「高重合ポリフェノール」を多く含む独自の「ウーロン茶エキス」も配合しているという。どちらも保湿をケアする美容成分だとしている。
▲1年弱で10億円を売り上げた「VARON」のオールインワンスキンケア
サントリーウエルネスでは、これまで市場に、「ミドルの男性」向けのオールインワン化粧品がなかったことに着目。商品開発を行ったという。スキンケアをしたことがないミドルの男性にとって、ライン使いの商品よりも、オールインワンを提案する方が受け入れられやすいと考えたという。
「VARON」のユーザーからは、「妻から肌を褒められた」「ゴルフ仲間からも肌のことを言われた」といった口コミが多く聞かれているという。
「ミドル・シニア層には、スキンケアすることが恥ずかしいと感じたり、スキンケアの効果に懐疑的であったりするユーザーが多い。周りから評価がされることによって、効果を実感したり、長く続けられたりしているようだ」(美容事業部・西山雅大氏)と話す。
同社ではこのほど、「VARON」のシリーズから、ボディーソープやフェイスウォッシュも発売した。夏ごろから、新規のウェブ広告も展開する予定だとしている。
【注目ブランド】京福堂「BARONY MIRROR」、ミドル向けジェル&洗顔 保湿重視で魅力と人生を変える
メンズサプリなどを販売する京福堂は、メンズ化粧品シリーズ「BARONY MIRROR(バロニーミラー)」から、オールインワンジェルと洗顔料の2品目を展開している。肌の水分量を保つ処方を採用しており、乾燥肌に悩む多くのミドル世代をターゲットにしているという。「BARONY」ブランドのメッセージである「魅力が変わる、人生が変わる」をかなえる製品となっているとしている。
オールインワンジェルは22年8月に発売。化粧水や美容液、乳液などの複数の機能を有しているという。「スキンケアに興味があるが、何から始めたらいいか分からない」という人に向けて、基本的な成分を配合。時短ができる製品になっているという。
▲「BARONY MILLOR」シリーズのオールインワンジェル
洗顔料は、「男性の肌の水分を奪わない」をコンセプトにしている。
ミドル世代の男性の肌は、水分が不足しがち。乾燥を防ぐために皮脂を多く分泌するようになる傾向があるという。その結果、顔のテカリが増すようになるのだそうだ。
同社では、洗顔料に続けて、オールインワンジェルを使う方法を提案している。まずは洗顔料で、肌の水分を奪いすぎずにケア。その後、オールインワンジェルで保湿することにより、乾燥しやすい男性の肌を守るという。
京福堂では、男性の「モテ」に関する悩みにLINEで応えるサービスも提供している。メンズサプリやメンズスキンケアで、男性の魅力をサポートするとしている。
【インタビュー】SMD 代表取締役 霜出隆志さん(25)「『肌投資』で10年後の自分を作る」
ウェブ広告代理店事業を展開するSMD(エスエムディー)の霜出隆志さんは、18歳から、スキンケアを習慣にしているそうだ。日焼け止めやクレンジング、洗顔、化粧水、美容液を使い、週に一度は特別な「酵素洗顔」も行っているという。「スキンケアしていると、周囲から『肌がきれい』と褒められてうれしい。スキンケアは、10~20年後の自分に向けた「肌投資」だ」と話している。
▲SMDの霜出隆志さん(25)
<週に一度は酵素洗顔>
――普段はどんなスキンケアをしていますか?
毎日、朝は洗顔、夜は洗顔とクレンジングをします。化粧水と美容液も使います。出かける前には日焼け止めも塗っています。
スキンケアにかける時間は、朝と夜それぞれ10分程度です。
週に一度は、特別な「酵素洗顔」も行っています。1週間分の汚れを落とすために、毎日のスキンケアの最後に行っています。「酵素洗顔」の後は、パックも使っています。
――どんな製品を使っていますか?
クレンジングと化粧水、美容液は、「魔女工房」というブランドの製品を使っています。洗顔とパックは、「MEDIHEAL(メディヒール)」というブランドです。
「酵素洗顔」のブランドは、資生堂です。カプセルに入った砂状の洗顔剤を、泡立てネットで泡立てて使用します。洗浄力は強いですが、油分を落としすぎないのが特徴です。
<メンズコスメジプシー>
――スキンケアを始めたきっかけは?
特に肌悩みがあったわけではないのですが、当時付き合っていた女性から、「化粧水と乳液を使ってケアしたほうがいい」と薦められて始めました。しばらく使ってみると、肌が柔らかくなり、透明感が増した気がしました。
これまで、いろいろなブランドの製品を、買ってはなくなるまで使ってきました。中には、べたついたりつっぱったりして、自分の肌に合わないものもありました。一度、スキンケアクリニックで自分の肌について調べてもらったところ、「乾燥肌」であることが分かりました。それ以来、保湿力の高い製品を選んで使うようにしています。
<将来の自分への投資>
――スキンケアをしていて、メリットに感じたことは何ですか?
スキンケアをしても、何かが劇的に変わるわけではありません。ただ、見ている人は肌を見ているので、初めて会った時の印象が変わると思います。
自分は、女性からモテるためにやっているのとは少し違いますが、女性からは、「肌がきれいですね」と言われることがよくあります。
スキンケアに興味がある人は、「将来への自分の投資」だと思って、習慣化するといいと思います。
【注目ブランド】バルクオム「BULK HOMME」、シリーズ累計出荷1000万本 洗顔料の魅力は「泡の質」
バルクオムは、メンズスキンケアブランド「BULK HOMME(バルクオム)」を展開している。13年の事業開始以来のシリーズ累計出荷数は、2022年1月時点で、1000万本以上となっている。
同ブランドで特に人気の商品は、洗顔料「THE FACE WASH(ザ・フェイスウォッシュ)」。洗顔料の魅力は、「泡の質」だとしている。
▲累計1000万本を出荷した「BULK HOMME」シリーズ
同商品は、濃厚な泡のクッションで、洗顔時の摩擦をやわらげる「生石けん」だ。定期購入を選択する人も多いという。同商品の累計販売数は400万本を超えている。
▲人気の「生石けん」
同社は、EC販路では、自社サイトやアマゾンを中心に販売している。色や種類が異なるアイテムを含め、30SKU以上を展開しているという。リピーターが非常に多いそうだ。
全てのプロダクトは「男性の肌にとってどうあるべきか」を考えた上で設計しているという。
ブランドエクスペリエンスビジネスユニットプロダクトデベロップメントディヴィジョンのディヴィジョンマネージャーを務める西村奈津美氏は、「どういう状態が健康なのか?」を突き詰めて、商品開発を行っているそうだ。
「バルクオム」は、「現代を生きる世界中の男性たちに、”なりたい自分”に進化できる自信を与えるスキンケアブランド」(同)だとしている。「バルクオムの製品を、イメージをコントロールする『ツール』として活用してほしい」と話す。
【注目サービス】アイスタイル「@cosme SHOPPING」、男性ユーザーは年々増加 男性による「女性向け」の購入も拡大
口コミプラットフォーム「@cosme(アットコスメ)」を運営するアイスタイルでは、化粧品ECサイト「@cosme SHOPPING(アットコスメショッピング)」を運営している。幅広い商品を取り扱う同社だが、中でも男性向け化粧品の購入は、年々増加する傾向にあるという。コロナを機に、口コミを閲覧する男性ユーザーの数も増えたという。
同社ECでの男性ユーザーの購買傾向をみると、いわゆる「メンズコスメ」であることに必ずしもこだわっていないことがうかがえるという。「女性向け」の化粧品も含め、アットコスメの「口コミで高評価されている商品」や「SNSで話題の商品」の購入が増加しているという。「メンズ美容」のすそ野が広がった結果、以前は「女性向け」とされていた商品を抵抗感なく手に取る男性が増えているようだとしている。
▲「@コスメストア」ではメンズコスメコーナーを設置し、メークアップのサービスも
同社の調査の結果、「メンズコスメ」ということで商品を選んでいる男性ユーザーは、年齢が若くなるほど減少する傾向があったそうだ。同社では、「メンズ向け」といった区別の意味が、今後さらになくなっていく可能性を指摘している。
同社の、男性ユーザーの口コミによる人気ランキングでは、ブラシなどのツールから、スキンケア商品を中心とした化粧品までがランクインしている。その他、眉を整えるためのメーキャップ商品も上位にランクイン。眉を整えるアイブロウや、ひげやクマをカバーしながら健康的で清潔感のある肌にみせてくれるBBクリームなどを取り入れる男性ユーザーも増えているという。
ECと実店舗を連動させる形で、メンズコスメ向けのキャンペーンも実施している。
実店舗では、メンズコスメコーナーを展開したり、男性顧客に男性スタッフが、メークやスキンケアを施すタッチアップサービスを提供したりしているという。
同社サイトには、「メンズコスメ」向けの商品の特集ページも設置している。
商品情報の分かりやすさや、口コミや美容部員によるレビューを生かし、コスメ初心者の人でも買いやすい売り場づくりを行うことによって、結果的に、男性のユーザーでも買い物がしやすいサイト作りを目指していくとしている。
【注目ブランド】DMGコンサルティング 「GAコスメティックス」、海外のアマゾンへ出品の打診も
通販のコンサルティングを手掛けるDMGコンサルティングは、医薬部外品のオールインワンジェルクリーム「GAコスメティックス」を、自社ECサイトとアマゾンで販売している。2021年10月の発売以来、定期顧客数が安定的に伸長している。海外のアマゾンからも出品の打診が来たとしている。
オールインワンジェルクリーム「GAコスメティックス」は、40~60代の男性向けに、電気シェーバーを使用する前と後のどちらにも使えるように設計された商品。カミソリ負けの予防として使えるのだという。
▲「GAコスメティックス」のオールインワンジェルクリーム
ビジネスマンのユーザーからは、「出張時に持っていくのに便利」といった声が聞かれるという。老舗バーのマスターのユーザーは、「肌にツヤが出て、仕事中で見た目にハリが出る」などと話しているという。
メンズ向けに開発した商品だが、女性ユーザーも一定数いるという。夫婦で使うために、複数個をまとめ買いするユーザーも見受けられるとしている。
海外のアマゾンからは、「ミドル世代の男性向けひげそりケア」というコンセプトがユニークだと評価されたという。秋ごろをめどに、海外向けの販売を進めていく予定だとしている。