【こども家庭庁】地域限定保育士 戦略特区から全国へ拡大

こども家庭庁は、国家戦略特区で行われている地域限定保育士事業について、特区以外の自治体でも可能にする方針を決めた。保育士試験を受けた自治体でのみ働ける資格を与える仕組みで、保育人材不足への対策として全国展開を目指す。2024年の通常国会にも、特区と同様の規定を盛り込んだ児童福祉法改正案を提出する方向で検討を進める。

 地域限定保育士の制度は15年度の国家戦略特区法改正で始まった。特区に指定された自治体が独自の保育士試験を実施し、合格すれば特区内で3年間働ける資格が取れる。4年目以降は通常の保育士と同様に全国で勤務可能になる。

 これまでに神奈川県や大阪府などが特区指定を受けて実施。例えば大阪では、通常の保育士試験で課せられる実技試験を講習受講で代替するという独自試験を行っている。多様な試験形態を用意することで受験者の利便性を高める狙いもあり、内閣府の担当者は「試験だと緊張して実力を発揮できない人でも講習なら問題なくこなせるというケースもある」と話す。

 実施自治体が保育人材確保で成果を上げており、保育士の質が低下するなどの弊害も確認されていないことから、政府は22年6月、「特別措置の全国展開について、今後の児童福祉法改正に向けて議論する」との方針を決定。先の担当者は「われわれとしてはすぐにでも全国展開したいところ。あとは法改正のタイミング次第だ」と話す。

 政府は今年3月に「異次元の少子化対策」の「たたき台」をまとめており、24年通常国会では具体策を反映した児童福祉法改正案の提出が見込まれる。地域限定保育士はたたき台で触れられていないが、こども家庭庁はこの改正に合わせて、地域限定保育士の全国展開も法案に盛り込む方向だ。

 通常、保育士試験は都道府県が行うが、特区では政令市や一般市も可能としており、仙台市などで独自試験の実績がある。全国展開に当たり、こども家庭庁は事業の実施主体に市も加えるかどうか検討する。

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