5月15日~26日に開催された「TECH+ Business Conference 2023 ミライへ紡ぐ変革」では、データ活用、EC再考、物流DX、コミュニケーションDXの4つのテーマの下、有識者による講演が多数行われた。本稿では、5月24日の「Day 8 EC再考」から、世代・トレンド評論家で立教大学大学院 客員教授の牛窪恵氏が登壇した基調講演「コロナが変えた顧客価値~ニューノーマルと2030年の経営」の内容を抜粋してお届けする。
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コロナ禍が取り払った「4つの壁」
牛窪氏は冒頭、コロナ禍は「4つの壁を取り払った」と語った。それらは以下の通りである。
例えば、会社と家庭の壁が取り払われたというのは、テレワークが普及し、仕事が生活の場に入り込んできたことなどを指す。都会と地方の壁については、ワーケーションや副業といった働き方の変化に伴い、その拠点や価値観が多様化したことを指す。同氏は、「Z世代はコロナ禍以前から、これらの壁がなぜ存在するのか、疑問に感じていた」と説明する。コロナ禍により、こうした疑問が上の世代へも広がり、結果的に社会全体の変革につながりつつあるのだ。
新たな顧客価値を理解するには?
では、時代は2030年に向け、どう変化していくのか。
牛窪氏は自身が過去に行った草食系世代(主に現30代半ば~後半)への大規模なヒアリング結果などを挙げ、世代間ギャップを生んでいるものの1つが、脳に変化が起こりやすい思春期の直後(17~23歳)の経済や社会情勢、あるいは「人生のどの時点で初めてデジタルに接したか」などであり、「そこで形成された価値観が、その後の人生においても長きにわたって影響を与えると見られる」と持論を展開した。
同氏は15年以上、企業と「若年層マーケティング」を続けてきた印象から、「時代は常に、若い世代が予見する方向に進んできた」という。コロナ禍で顧客価値がどのように変化したのかを理解するためには、若者世代とコミュニケーションを取り、彼らと分かり合うこと(相互理解)が重要なのだと説明する。
「2030年に向けた経営のヒントは、若者たちが求めるニーズの延長線上に眠っています」(牛窪氏)
とは言え、「世代間ギャップを埋める上では、ストレスがかかる」と牛窪氏は話す。それを解消するためにも「(気持ちのゆとりを持ち、自身と向き合う)おひとり時間を少しでも取り入れていただきたい」と聴講者に呼びかけていた。