日本およびアジアでデータセンター・プラットフォームを提供するDigital Edge(デジタルエッジ)は5月17日、大阪市中央区に所在する、同社が初めて自社による設計構築を行ったデータセンター「OSA1」の報道関係者向け施設見学会を開催した。

2022年1月から運用を開始しているが、報道関係者向けに見学会を行うのは今回が初めてとなる。本稿では、データセンター内部と説明会の一部始終を紹介する。

  • デジタルエッジのデータセンター「OSA1」

関東に7拠点 関西に2拠点のデータセンターを展開するデジタルエッジ

デジタルエッジは、アジア太平洋地域のデジタルディバイド(環境格差)を解消する架け橋になることを目標に設立された新しいデータセンター事業者。世界のデジタルな未来に向けて基盤を構築し、組織の持続的な成長、サービスを提供する全ての人々を支援することを使命に活動している。

関東地域(東京と横浜)に6拠点、大阪に2拠点、都心と郊外に分けてハイブリットなデータセンターを展開しており、2023年3月にはヒューリックと共同で、関東地域7拠点目となるデータセンター「TYO7」を都内に構築することも発表している。

  • デジタルエッジのデータセンター「TYO7」外観パース

その中で今回筆者が伺ったのは大阪に構えられた「OSA1」だ。

「OSA1」は、関西圏に2つある同社のデータセンターのうちの1つで、関西圏のネットワークの中心地から近距離に位置し、京阪神ビルディングが所有するデータセンター向けビルの中に構築されている。大阪でのリテール向けコロケーションに対する高いニーズに対応しているため、関西圏における新たなインターコネクション・ハブとなっているのが特徴だ。

筆者がこのデータセンターに訪れて最も印象的だったのは、「セキュリティの頑丈さ」だ。OSA1は、都心からアクセスの良いデータセンターとなっているため、セキュリティには万全の体制が敷かれている。

ビル自体の警備や受付のカード認証をはじめ、顔認証システムの導入や手前の扉が開いたままだと次の扉を解錠できないシステムなど、その徹底ぶりが見て取れる。また普段は、共連れ防止のために、1人ひとりがカードで認証しないと入館・入場できない仕組みになっている。

  • 受付のイメージ。ここで身分証を提示することでカードを受け取ることができる

また監視センターには24時間365日職員が在中しているため、すぐに対応できる仕組みがなされており、有事の際も安心だ。

昼間は4名、夜は1名の体制で稼働を監視しているが、外部の設備の監視センターとも連携しているため、何かあればすぐに連絡が入るようになっているという。

  • ここでデータセンターの職員が日々活動している

南海トラフ巨大地震に備える! データセンターを守る免震構造

セキュリティ以外に印象的だったのは「免震構造」についてだ。

2023年に入ってから大きな地震が立て続けに被害を出しているが、この大阪という土地もその例外ではない。「上町断層帯地震」や「南海トラフ巨大地震」といった、大きな被害を出すことが予想されている大地震の影響を受ける可能性のある県として、府や市が被害予想を出しているほどの切迫した状況なのだ。

その中で、「OSA1」は国内最大クラスの免震構造設計が施されており、免震層の変形性能として大地震の変形に対して2倍以上の余裕を持っている。これにより、大きな地震の際にも問題なく、センター内のデータを守ることができるのだ。また、ハザードマップ上でも河川の氾濫や液状化が起こりにくい場所を選んで建設されているため、その点でも安心だ。

データセンターのスペックとしては、コロケーション(データセンター内に顧客が所有するサーバーやネットワーク機器などを設置するスペースを借りることのできるサービス)スペースは、床下に電源や通信用の配線、さらに空調設備などの機器を収納することのできるフリーアクセスフロアとなっており、ハイパースケーラーでの利用にも対応している。

  • フリーアクセスフロアとなっているコロケーションスペース

また耐荷重も1.8トンとなっており、集積密度の高いIT機器やバッテリーなどの積載に耐えられるほか、微量な煙を感知すると窒素を利用する消火装置が作動する仕組みになっているほか、電力は14.4MWまで拡張される予定だといい、データセンターの電力使用効率を表す指標であるPUEは1.32を想定しているそうだ。

デジタルエッジが約束する3つのESGコミットメント

このようにさまざまな特徴を持ったデータセンターを展開する同社だが、その根底として「資源の尊重」「人と地域の尊重」「透明性の尊重」という3つのESGコミットメントを設定しており、リスペクトの上に構築されたパフォーマンスのエコシステムを構築することを約束している。

「資源の尊重」については、クラス最高の環境負荷管理に努め、2030年までに事業におけるカーボンニュートラルを達成することを目標としているとしている。

「人と地域の尊重」については、同社が事業を展開する各市場にとって正しいことをするために、現地のチームやパートナーを見つけることを約束し、プラットフォーム全体で基準の一貫性を確保しながら、それぞれの特有な文化の特質を尊重することとしている。

そして、「透明性の尊重」では、最高水準のビジネス倫理を維持い、事業活動のあらゆる側面とサプライチェーン全体にわたってベストプラクティスを推進することを約束している。

デジタルエッジは今後もデータセンターの展開を通じて、顧客と社会に貢献する事業を進めていきたい考えだ。