サイボウズは5月16日、都内でメディア向けにラウンドテーブルを開催した。説明には同社 代表取締役社長の青野慶久氏が立った。

kintoneのエコシステム拡大に注力

はじめに、青野氏は2月に行った決算を引き合いに出しつつ「2015年以来の投資の結果、kintoneのテレビCMで認知が図れ、小学生に“kintone知ってる?”と話しかけると“あ、どクラウドね”と言われるくらいまでになった。クラウドの売り上げは堅調だ。意外とパッケージの売り上げも減少するかと思ったが、10年経過しても減少せずに逆にGaroonの売り上げは増加した。kintoneは連結売上高が100億円を突破し、エコシステム型のビジネスモデルの形ができてきた」と振り返った。

  • サイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏

    サイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏

サイボウズでは、kintoneが痒いところに手が届かないことを自認してプラグインや外部サービスとのAPI連携を2015年から開始し、現在では300以上の連携が可能になっている。

また、パートナーも受託して納品する旧式のSIではなく、教育・内製化支援、構築コンサルティングを含めた“伴走パートナー”が拡大し、さらにはノウハウ共有やユーザー交流をはじめとしたユーザーコミュニティとして「kintone hive」、自治体間をつなげるコミュニティ「Govetech kintone community」(通称:ガブキン)などでエコシステムの拡大に注力してきた。青野氏は「他にもSaaS(Software as a Service)の企業は多く存在するが、kintoneほどエコシステムに振り切っているSaaSはないと思う」と話す。

  • kintoneはこれまでエコシステムの拡大に注力してきた

    kintoneはこれまでエコシステムの拡大に注力してきた

既存4製品を結合・統合

同社では、2023~2025年までの全社スローガンを「25BT」(2025 and go Beyond with Trust)とし、“3年後の2025年を1つのマイルストーンとし、さらにその先の見据えた取り組みを、信頼を大切に進めていこう。”としている。

製品面では、SaaSならではのサイロ化にチャレンジする。昨今の企業では多くのSaaSを導入しているものの、データや情報、コミュニケーションがチームごとに分断されていることから組織横断の情報共有ができていないといった実情があり、情報のサイロ化とともに現場の力を活かせない状況となっていると指摘。

そのため、同社ではサイロ化した情報を1つのプラットフォームとしてkintone上にオープンに共有し、現場が主体となって業務改善が進めば、情報共有でチームワークが向上して組織全体の進化を引き起こす流れを形成していくことを狙っている。

  • 今後、情報のサイロ化の解消にチャレンジしていく

    今後、情報のサイロ化の解消にチャレンジしていく

現状、サイボウズではkintoneに加え、グループウェアの「サイボウズ Office」と「Garoon」、メール共有システム「Mailwise」の4つの製品を提供している。

青野氏は「“サイボウズNEXT”として既存4製品を徐々にシームレスに結合・統合していくと同時に、パートナーの方々が統合的に周辺サービスを提供できるようにインフラを構築する。今年の秋ごろから成果物が出てくることが予想され、11月に予定しているCybozu Daysで何かしらの発表をする」と語った。

  • サイボウズNEXTとして4製品の結合・統合を目指す

    サイボウズNEXTとして4製品の結合・統合を目指す

グローバル展開を推進しないと「死ねない」

他方、販売面ではグローバル展開をこれまで以上に取り組む。同氏は「これをやらないと死ねない。もともとソフトウェアエンジニアでビル・ゲイツ氏やスティーブ・ジョブス氏に憧れがあり、作って世界中のユーザーに利用してもらうことに対しては、売上、利益、会社の規模以上にこだわりがある」と力を込める。

実際、昨年にはリコーとkintoneを独自カスタマイズで開発した「RICOH kintone plus」の提供を国内で開始。すでに米国展開を強化しており、今後は欧州市場に提供を拡大していく予定だ。

青野氏は「全世界に複合機の販売ネットワークを持っており、リコーさん自身がデジタルサービスを提供できる会社への変革を進めていることから、グローバルで売れる商材としてkintoneに目を付けてくれた。まずは、Ricoh USA経由で提供を開始している。日本発・日本初のグローバルソフトウェア企業に向けてグローバル展開を加速していく」と念を押した。

  • グローバル展開の概要

    グローバル展開の概要

一方、kintoneをはじめとしたツールに加え、組織の変革を支援するメソッド事業との組み合わせも積極的に展開し、具体的には中小企業経営支援プログラム「サイチャレ」を開始する。サイチャレは、同社のツールとメソッドを提供し、業務システムの内製化と会社のチームワーク醸成を支援するプログラム。

支援内容としてはkintoneライセンスの無償提供、同社のパートナーによる伴走支援、サイボウズ チームワーク総研によるチームワーク研修、非公開コミュニティの4つだ。参加費用は1社あたり税別で5万円、参加条件は従業員数50人以下の企業となり、創業年数、事業分野、資金調達のステージなどは問わないという。すでに5月15日に応募を締め切っており、今後は選考のうえ6月からスタートし、1年間で終了する予定だ。

  • サイチャレの支援内容

    サイチャレの支援内容

青野氏は「AWS(Amazon Web Services)などパブリッククラウドもスタートアップ支援があるものの、基本的にはライセンスを渡すだけの印象が強く、当社はkintoneを使いこなすまで支援していく」と述べていた。