以前から仕事が変わると言われている中で、2022年末に登場した「ChatGPT」などの生成系AIによりホワイトカラーの業務も影響を受けることが予想されている。これからの仕事はどうなっていくのか?
古来から仕事を変えてきた「スキル」
スキルはテクノロジーの進展により変化してきた。原始であれば、火を起こすことは重要なスキルだったし、その後は農業、建築、方位・ナビゲーション、金属加工などが求められ、中世になると印刷技術が登場する。
その後の鉄砲、時計、風車なども、それまでの“仕事”を変えた。こうして産業革命、コンピュータの普及とともに知識経済へと発展した。
世界経済フォーラム(WEF)では現在を「ポスト知識AI江尾許斐―」と位置付ける。知識経済を支えたのがインターネット、モバイル端末、ソーシャルメディア、クラウド、ビックデータ分析などであるのに対し、ポスト知識AIエコノミーはAI、IoT、ブロックチェーン、そして量子コンピュータとしている。そのポスト知識経済において「スキルは通貨になる」という。
「スキルには本質的な価値があり、将来の経済において交換ができるものというコンセプトだ。お金を投資したり管理したりするのと同じように、スキルについても投資や管理が必要」と説明している。
スキルが通貨になり、ふさわしいインフラが整備されるということは、スキルを持つ人がそれを示すことができる。つまり、機会不平等などの問題も緩和されるとの見立てだ。スキルの方向性を考える時のキーワードが“スキルとテクノロジーの交わるところ”だという。
「人間と機械の境界が曖昧になっており、インテリジェントツールの時代が到来する」とし、ここでは専門分野を持つ人間のスキルと生成系AIで見られるような個人にカスタマイズされたスキルが求められる、と続けている。
また、スキルは人の頭の中にあるもの、機械に何を訓練させたか、その両方に依存すると予想している。
自分のスキルを持ち、表現して価値を示す
すでに、スキルが通貨になりつつある兆候は出ている。2022年の米国の労働人口の39%がフリーランス、つまり個人のスキルだけで報酬を得ている人たちだ。また、通貨としてのスキルが出現した象徴であるギグワーカーについては、配達だけでなく、営業、事業開発、データ入力、会計などの職種もギグのマーケットプレイスに登場しているという。
さらには、ChatGPTの人気により「プロンプトエンジニアリング」という職種も生まれつつあるという。プロンプトエンジニアリングは、プロンプトを書いてプリセットとして保存し、顧客がそれを使うというもので、最大で年間33万5000ドルの価値という評価もあるそうだ。
スキルが通貨となることで、雇用の形態が変化し、特定のスキルや成果を求めて雇用するという時代になるというのがWEFの予想だ。これは、それまでの時間をベースとした雇用とは異なる。
ここから言えることは、自分のスキルを持つこと、それを表現し、価値として示すことができることが、今後は求められることになりそうだ。
例えとして、WEFは次のようなイメージを紹介している。
朝スキルマーケットにログインし、自分のスキルポートフォリオに関する最新情報を受け取る。どのスキルの価値が上がっているのか、あるいは下がっているのか。そして必要に応じてスキルポートフォリオを見直し、リスキルする。
そのような働き方を実現するインフラは、これから整備されていくことが予想されるが、心構えをしておく必要がありそうだ。しかも、「将来は、われわれが思っているほど遠い先ではないかもしれない」とWEFは記している。