IPA(情報処理推進機構)は4月24日、IT人材の学びおよび労働移動の実態や企業の変革および組織・人材マネジメントなどの実態把握を目的とした、「デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2022年度)」の報告書を公開した。これによると、企業に所属するIT人材の半数以上がキャリアアップに前向きな半面、所属企業ではキャリアアップのための計画的な配置・育成がされていないという。

同調査は、同機構が個人および企業を対象に実施したもの。個人アンケート調査は2022年11月27日~12月13日にかけて実施し、回答者数は企業に所属するIT人材が1500人、特定の企業に属さないIT人材(フリーランス)が397人。企業アンケート調査は2022年12月9日~2023年1月10日にかけて実施し、回収企業数はIT企業が792社、事業会社が1225社の計2017社。

なお、同調査では先端IT従事者を、データ・サイエンス、AI(人工知能)・人工知能、IoT、デジタル・ビジネス/X-Tech、アジャイル開発/DevOps、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)、ブロックチェーン、自動運転/MaaS、5G(第5世代移動通信システム)、その他先端領域の各領域に関するサービスに従事する人材と定義し、それ以外を非先端IT従事者としている。

企業に所属する回答者に将来のキャリアの志向性を尋ねたところ、「これまで担ってきた職務・役割に囚われず、大きくキャリアチェンジしたい」との回答は、先端IT従事者で20.4%、非先端IT従事者で18.1%だった。

また、「これまで担ってきた職務・役割よりも高いレベルであったりこれまでの職務・役割に近しい別の職務・役割を担いたい」との回答は、先端IT従事者で39.3%、非先端IT従事者で32.2%だった。いずれも半数以上の会社員が、これまでよりも大きなキャリアチェンジや高いレベルの職務・役割を志向している。

  • 将来のキャリアの志向性 出典: IPA

キャリア形成上の悩みに関する質問では、先端IT従事者の32.2%、非先端IT従事者の28.5%が所属企業に対して「キャリアアップのための計画的な配置・育成がされていない」と回答し、最も多い割合となった。

  • キャリア形成上の悩み 出典: IPA

新たなスキル獲得に有効な方法としては、先端ITの会社員の28.9%が「社外兼業・副業における経験」を挙げた他、19.7%が「組織外の勉強会やコミュニティ活動等への参加」を挙げている。

従来からのコンテンツ学習に加えて、キャリアアップの場として越境学習や社外のコミュニティの活用が指向されてきていると、同機構は考えている。

  • 新たなスキル獲得に有効な方法 出典: IPA

企業に社内のIT人材を評価・把握する基準の有無を尋ねると、事業会社では「ない」が80%を超えており、同機構はIT人材のスキルを評価する基準を整備して適切に評価することが求められるとしている。

  • 社内のIT人材を評価・把握するための基準 出典: IPA

同機構は今回の調査結果で浮かび上がった課題を踏まえて施策の方向性を8つに整理し、施策体系として取りまとめたという。

経済産業省と同機構が2022年12月に公開したデジタル・スキル標準の活用を推進すると共に、個人には自立・自律的な学びを、企業には個人を惹きつけて学びを促すラーニング・カルチャーの醸成に向けて、施策内容の具体化などについて継続的に検討していくとしている。