米オラクルは4月19日(現地時間)、ニューヨークタイムズのベストセラー作家であるSeth Stephens-Davidowitz氏と共同で行った「意思決定のジレンマ」に関する研究結果を発表した。同調査は、2023年1月に、日本を含む世界17カ国、1万4,000人の従業員とビジネスリーダーの回答者を対象に実施したもの。

同調査では、74%が毎日行う意思決定が過去3年間で10倍に増え、70%がデータに圧倒されて意思決定をあきらめたことがあると回答した。適切な意思決定を行うには、どうしたよいのだろうか。

同調査から見えてきた意思決定にまつわる課題とその解決策について、米オラクル アナリティクス・プロダクト・ストラテジー担当バイスプレジデントのジョーイ・フィッツ氏に聞いた。

  • 米オラクル アナリティクス・プロダクト・ストラテジー担当バイスプレジデント ジョーイ・フィッツ氏

データは増えているが、意思決定には生かされていない

今回の調査により、人々が意思決定を行うシーンが増えている一方で、意思決定がうまくいっていないことが明らかになった。以下が、それを裏付ける調査結果だ。

  • 78%:かつてないほどの多くのデータ・ソースから大量のデータ攻めにあっている
  • 86%:データ量の増加により私生活や仕事上の意思決定がより複雑になっている
  • 70%:データに圧倒されて意思決定をあきらめた
  • 85%:意思決定ができないということが、自身の生活の質に悪影響を及ぼしている
  • 85%が、うまく意思決定ができないことにより、「世界的な不安の急増」「機会損失」といった悪影響を及ぼしていると回答

上記の結果からは、膨大なデータが意思決定を妨げているという事実も見えてくる。一方、ビジネスリーダーは意思決定においてデータの活用を望んでおり、それが組織の成功に不可欠であることを理解していることも明らかになった。

  • ビジネスリーダーの97%:データを活用したい
  • ビジネスリーダーの93%:より適切な意思決定のインテリジェンスを有することが、組織の成功を左右する
  • ビジネスリーダーの72%:膨大な量のデータとデータに対する信頼の欠如により、意思決定が行えなくなった
  • 適切なデータとインサイトは、人事(94%)、財務(94%)、サプライ・チェーン(94%)、カスタマー・エクスペリエンス(93%)における意思決定の改善に役立つ
  • ビジネスリーダーは、適切なデータとインサイトが、人事(94%)、財務(94%)、サプライ・チェーン(94%)、カスタマー・エクスペリエンス(93%)における意思決定の改善に役立つと回答

意思決定のインテリジェンスとは、 データとテクノロジーを活用し、意思決定の方法、評価、管理、改善方法を理解する能力を指す。

さらに、ビジネスリーダーは、テクノロジーを使ってデータ主導の意思決定を行う組織について、信頼できる(79%)、成功が見込まれる(79%)、投資したい(76%)、提携したい(77%)、勤めたい(78%)と回答している。

ビジネスリーダーが求める「意思決定インテリジェンス」

フィッツ氏は、今回の調査結果について、「明らかなことは、人々がデータの活用が意思決定において重要と考えていること。にもかかわらず、人々はデータが膨大であり、かつ、分散しているため、活用が難しい状況にある。われわれがこれまで提供してきたツールのほかに、顧客が何を必要としているかを見極めたく、今回の調査を行った。われわれは顧客が課題を解決できるよう、支援していきたい」と述べた。

上記のような状況の下で、人々はパーソナライズドされた形でデータを提供してもらうことを望んでいるという。例えば、Oracle Fusion Analyticsは、分析を業務内容(ERP、SCM、HCM、CX)に密接に結びつけることで、コンテキストに沿った意思決定をサポートする。

そして、フィッツ氏は「もう一つ興味深い点がある」として、「85%のビジネスリーダーが、類似した意思決定の結果を知ることは、意思決定に大きな影響を与えると回答した」ことを挙げた。これは、前述した意思決定のインテリジェンスが求められていることを意味する。

意思決定のインテリジェンスに関しては、OCI Data ScienceとOracle Analytics Cloudを組み合わせて利用することで、組み込みの機械学習やAIモデルを通じて意思決定の強化をサポートし、選択肢にアルゴリズム的な視点を提供するという。加えて、Oracle Integrationは、デシジョン・モデリングと処理をサポートすることで、意思決定をキャプチャし、自動化する。

今回の研究からは、信頼性を担保した形で意思決定に必要なデータを絞り込み、それらをユーザーが必要とする形で提示し、さらには、意思決定のインテリジェンスを実現することで、適切な意思決定が可能になることが明らかになったといえる。

アナリティクスにAIを活用するオラクル

ChatGPTの登場により、AIに対する注目が高まっているが、オラクルのソリューションにもさまざまなAIが組み込まれている。アナリティクスの分野では、意思決定のほか、保護すべきデータの見極めや難読化において活用されている。

フィッツ氏は、AIを活用してアリティクスを行うサービスとして、「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)Vision」を挙げた。

同サービスは、ディープ・ラーニングを活用した画像分析を大規模に実行するためのAIサービスだ。例えば、駐車場に停車しているクルマを分析して、時間帯によって、クルマの台数がどう変化するかを見て行くといったことが行える。

フィッツ氏は同社のAIの活用について、「今後出てくるニーズだけでなく、既存のシステムに対しても、信頼性の高い形で備えていかなければならない」と語っていた。