リクルートマネジメントソリューションズは3月23日、中堅社員やシニア社員のキャリアを巡るもやもやを晴らす鍵となる「越境」をテーマにメディア共有会を実施した。共有会にはリクルートマネジメントソリューションズ マスターの井上功氏が登壇し、「越境とは何か」「なぜ越境が必要なのか」「具体的な越境の方法」を紹介した。

企業が事業領域を拡大させる鍵は「越境」

今回のメインテーマとなっている「越境」とは、所属している領域やコミュニティの心理的・物理的な境界を越えることを指す言葉だという。

  • 越境のイメージ

「越境の最小単位は『自分(個人)』を越える『個人越境』によって新しい自分の可能性を広げることです。コロナ禍で大幅にテレワークやワーケーションが進んだことをはじめ、働き方改革の推進によって、家と会社の往復以外の選択肢があまりなかった過去と比べて、現代は圧倒的に越境しやすいと言えます。特に春は、人事異動や進級・進学のタイミングで今の仕事やこれからのキャリアに関して悩み、もやもやしている人も多いと思いますので、この時期・タイミングだからこそ越境を考えてみると良いでしょう」(井上氏)

  • リクルートマネジメントソリューションズ マスター 井上功氏

個人での越境の重要性もさることながら、企業が成長するためには、「既存事業の領域からの越境が必要である」と井上氏は語った。

「既存事業が永続的に成長することは、外部環境が変化する限り不可能です。企業が事業領域を拡大・変化させるのであれば、仕事をする個人にも新たな学び、すなわち越境が必要になってくるのです」(井上氏)

近年、政府の推進などもあって注目を集めている「リスキリング(新しい業務、ビジネスに対して、新しいスキルを身に着けることと他分野の既存スキルを身に着けること)」や「アンラーニング(経験を通じて培ってきた価値観や習慣を他者または他社の思考によって意識的に白紙に戻し、新しいものを取り入れながら学びを修正していくこと)」に関しても越境することで促進されるという。

この時の越境は、ストレスなく自分が安心できる領域であるコンフォートゾーンから適度なストレスの中で自分を成長させることができる領域であるラーニングゾーンへの越境があてはまるそうだ。

またリスキリング以外にも「兼業・副業」、つまり「社員を社外へ越境させる」ことに関しての効果を企業も認識しつつあるといい、大手企業では8割以上が兼業・副業に前向きな姿勢を見せているのだという。

10種類の越境の中から自分にあったスタイルを見つけよう

では、具体的にどのような方法で越境を行うべきなのだろうか。井上氏曰く、越境には、経済活動に関わる越境が7種類と社会生活に関わる越境が3種類の計10種類が存在するという。

経済活動に関わる越境7種類とは、上記で紹介した「個人越境」をはじめ、今所属している組織内で居場所を変える「企業内越境」、会社を飛び出す「企業間越境」、今とは違う職種に挑戦する「職種間越境」、業種や業界を飛び越える「業種間越境」、官僚やアカデミズムの世界とつながる「産官学越境」、経営者側に転身する「労使間越境」が挙げられる。

一方で、社会生活に関わる3種類の越境は、ボランティアなどを通じてさまざまな人と出会う「世代間越境」、住む場所を越える「地域間越境」、日本を飛び出す「国家間越境」がある。

  • 10種類の越境のスタイル

「今回の説明を通じて『越境すると獲得できることがたくさんある』ということをお伝えしたいと思っています。今所属している領域内の作法や常識は新しい場所は異なるものです。そのため、新しい領域でコミュニケーションを深めることによって、新しい知識やモノの見方の転換を獲得することができるのです」(井上氏)

井上氏は、「人生100年時代」という言葉を挙げ、これからの時代は教育を受け、仕事をし、老後を迎えるという今までの流れではなく、越境が前提のマルチステージ・キャリアになっていくと予想していると語った。

「私たちは会社員である前に、まず社会人であるということを忘れてはいけません。そのため人生100年時代のキャリア開発は、個人主体になっていくべきです」(井上氏)