日本デジタル空間経済連盟はこのほど、東京都内で「Digital Space Conference 2023」を開催した。同イベントはメタバースをはじめデジタル空間における課題を確認し、今後の展望と理解促進について議論することを目的としたもの。本稿では、ゲーム領域におけるWeb3の将来性が語られた講演の様子をレポートする。

エンタメ・ゲーム領域におけるWeb3市場

エンターテインメント領域の中でも特にゲーム業界に着目した時に、Web3サービスの基盤となるブロックチェーン技術の可能性を一躍感じさせた立役者といえば、ベトナム発のゲーム「Axie Infinity(アクシーインフィニティ)」が挙げられる。

  • Axie Infinityのゲーム画面

    Axie Infinityのゲーム画面

2018年にリリースされたこのゲームは、2021年2月には24.4万ドルほどだった売上が同年7月には1億9689万ドルまで増え、8月には3億6442万ドルに達した。まさに"爆発的な"売上増である。

スマホゲームなどを手掛けるgumiの代表取締役社長 川本寛之氏は「現在の国内のモバイルゲームの市場は約1兆円、世界では約7兆円ほどであり、Axie Infinityは驚くべき売上額。Axie Infinityはゲーム内のアイテムにブロックチェーンで資産価値を持たせており、ブロックチェーンをゲームに利用する可能性を感じさせるきっかけとなった」と同ゲームを紹介した。

  • gumi 代表取締役社長 川本寛之氏

    gumi 代表取締役社長 川本寛之氏

Axie Infinityがこれほど注目された理由は、高い収益性を誇ったからだけではない。特定の国やサービスプロバイダーに依存しない非中央集権的な特徴を持つブロックチェーンだからこそ、ゲーム内の通貨やキャラクターなどは国を超えて売買することを可能にしたからだ。Axie Infinityはプレイするとゲーム内の通貨「SLP」をもらえるのだが、このSLPは暗号資産であり実際に売買可能である。

主に東南アジアなどの発展途上国では、ゲームをプレイすることでNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)などの資産を保有できるようになり、「Play to Earn(ゲームをプレイして稼ぐ)」という仕組みが確立され始めた。新型コロナウイルス感染症の流行で経済活動が低迷する中で、不況により仕事を失ったフィリピンの人々が救われた例もあるようだ。

  • Axie InfinityによってPlay to Earnが広がり始めた

    Axie InfinityによってPlay to Earnが広がり始めた

もう一つ、Axie Infinityがきっかけとなって形作られた仕組みがある。それは「スカラーシップ」だ。実は、Axie Infinityを始める際には3体のNFTキャラクターを購入する必要があり、初期費用として10万円ほどが必要だ。しかし、発展途上国の人たちはそのための資金を持たない場合が多い。そこで生まれたのがスカラーシップ制度である。

この制度は、多くの資金を持った「マネージャー」がNFTを保有して資金を持たない「スカラー」にNFTを貸し出し、スカラーはゲームをプレイして得た稼ぎの一部をマネージャーに戻す仕組み。この制度によってゲームを始めやすくなった結果、「GameFi(GameとFinanceを合わせた造語)」が発達したと考えられる。

  • スカラーシップ

    スカラーシップ

こうした流れを受けて、GREEやSEGA、Klabなど国内でも大手ゲーム会社がGameFiへの参入を正式に表明している。今後ますます市場が拡大すると思われる。

GameFiが拡大するために乗り越えるべき課題は3つ

川本寛之氏は「ゲーム領域におけるWeb3市場の課題は主に3つある」と指摘した。1つ目はユーザーの心理的なハードルだ。GameFiではNFTや暗号資産の売買が発生するため、ゲームを始めるためにウォレットや口座が必要となる。その手続きに関する煩雑さや難解さがハードルとなっている。また、暗号資産や交換所に対するハッキングや不正事件が絶えないこともあり、暗号資産そのものに対する不信感も残っている。

この課題を解決するために、一般ユーザーが利用しやすい仕組みの構築が必要だ。ゲーム内でウォレットを管理して暗号資産やNFTを売買できるプラットフォームが重要となる。その他、ゲームを開始するとすぐにウォレットの作成や本人確認を求めるのではなく、チュートリアルの中で自然にユーザーがプレイを継続できるよう、心理的ハードルを下げる仕組みも必要となるそうだ。

  • ディスカッション中の様子

    ディスカッション中の様子

2つ目はゲーム市場の課題で、これは言い換えると優良なコンテンツの不在である。現状のところ、Play to Earnを目的とするゲームは"稼ぐこと"に偏った内容が多く、ゲーム性が単調なものが多いのだという。

リミックスポイントの代表取締役社長 CEOである小田玄紀氏は「投機性が高いゲームは『みんなが稼いでるから』という動機で始める人も多いが、ゲームの内容が面白くないとプレイヤーが離れてしまい、すぐに人がいなくなって一気に稼げないコンテンツになってしまう」と訴えた。

  • リミックスポイント 代表取締役社長 CEO 小田玄紀氏

    リミックスポイント 代表取締役社長 CEO 小田玄紀氏

この課題に対しては、やはり高品質なゲームコンテンツの作成をするべきだろう。ユーザーは、面白さを重視しながら長期間安定して運用できるゲームを求めている。そのためには知名度や人気度が高いIPの活用も有効だという。

3つ目の課題は企業側に対する各種規制だ。日本のユーザーがゲーム内で使うトークンを事業者が発行するためには、日本の取引所に上場しなければならないなど、GameFi業界は参入する企業への障壁が高いのだという。さらに、賭博(刑法)や景品表示法などへの対応も求められている。

また、日本の企業がトークンまたは暗号資産を保有する場合には、期末時価評価課税がかかる税制も障壁となっているようだ。暗号資産を売却せずとも保有しているだけで課税となるのだという。

こうした課題に対し、特に日本デジタル空間経済連盟らが中心となって事業環境の整備に向けた働きかけを行うとしている。同連盟は当局への意見出しやルール整備をはじめ、業界団体間での意思疎通と連携を強化する方針とのことだ。