PCビジネスからスタートしたデル・テクノロジーだが、最近では、サーバ、ストレージ、ネットワークといったインフラストラクチャー ソリューションズ グループ (ISG)の成長が著しい。昨年11月に発表された2022年2月~2023年1月の第3四半期の業績においては、ISGは過去最高を記録した。
ISGの成長においては、2016年に買収したストレージ大手のEMCの影響も大きい。一方でEMCの買収で傘下となったVMwareを2021年にスピンオフしている。また、2013年には非上場化し、2018年に再上場している。これらを実施した背景を、来日した米デル・テクノロジー CFO(最高財務責任者)のトム スウィート(Tom Sweet)氏に聞いた。
同氏は、1997年にDellに入社後、企業財務担当バイス プレジデント、会計監査役、内部監査責任者、最高会計責任者など、さまざまなリーダー職を歴任。会長兼CEOのマイケル・デル氏を長年にわたりサポートしている。
2022年2月~2023年1月の第3四半期の業績は好調でしたが、その理由をどのように分析していますか?
トム スウィート氏:第3四半期の業績を牽引したのはストレージ・サーバのISGでした。背景には、企業のビジネスモデルを支えるためにテクノロジーを活用するというトレンドがあり、自動化や生産性向上、データ分析といったとニーズが業績に好影響をもたらしたと思います。ただ、売上全体としては、マイナス6%で、PCビジネスの弱含みの影響があったと思います。一方、営業利益では、いい状況でした(過去最高の24億ドル)。
PCを中心とするクライアント ソリューションズ グループ(CSG)の第3四半期の売上高は、前年同期比17%減の138億ドルでしたが、このあたりの要因をどのように考えていますか?
トム スウィート氏:PC市場はパンデミックの間に急速に拡大しましたので、ここで少し止まったというのは、驚きではないと思います。ただ、PCの領域はパンデミック前に比べると拡大(2億6000万台から2億9000万台)しており、PC市場は、弊社にとって重要である点には変わりありません。
中国のゼロコロナ政策や半導体不足は業績に影響はありましたか?
トム スウィート氏:コロナについては、サプライチェーンでの影響はありました。中国政府とは、緊密に連携することで、大きなインパクトが出ないようにしています。半導体不足に関しては、サプライチェーンにおいて、短期的には影響はありました。
御社は、2013年に非上場化し、2018年に再上場していますが、それぞれの狙いを教えてください。
トム スウィート氏:2013年の非上場化は、会社がより効率化を図るために構造改革を行う必要があったためです。また、市場ニーズに対応するために、リソースを整理する必要がありました。それは上場企業としてやるべきではないと判断しました。2014年に構造改革を実施し、その後、EMCとの統合があり、そのときに Class V tracking stockを発行したわけですが、それをClass C common stock あるいはキャッシュにスワップさせる必要があり、再上場しました。資本構造をFortune 500の企業にふさわしいものにするというのが狙いです。
2016年に実施したEMCとの統合には、どのようなメリットがありましたか?
トム スウィート氏:EMCとの統合の目的は、われわれが包括的なインフラを持つ企業になりたいということでした。データセンター向けのストレージという面でEMCは優れていました。また、Fortune 500の企業と良好な関係をもっていましたので、EMCと一緒になることで、インフラビジネスの拡大を図れると思いました。EMCはサーバがなかったので、EMCのお客様にサーバを売る、逆にわれわれのサーバのお客様にストレージを売るというクロスセルのチャンスが出てくるというのが主な理由です。合併により、大きなデータセンターにインフラを提供することで、ビジネスの拡大を図ることができました。
VMwareをスピンアウトした理由を教えてください。
トム スウィート氏:VMwareとはソリューションやプロダクトをジョイントすることで緊密な関係を持っていましたが、その関係は一般的なビジネスのフレームワークでも可能だと思いました。分かれることで、ソリューションや商材の拡大において、それぞれの企業の柔軟性増すと思いましたし、両社の株主に新たな価値を提供できると思いました。また、お客様にVMware以外の選択肢を提供できると思いました。
今後、御社がサービス領域を拡大するなど新たな領域に進出する可能性はありますか?
トム スウィート氏:われわれは、すでに100億ドルを超える大きなサービスのビジネスを行っています。現在のお客様は包括的なソリューションを求めており、すなわちハード、ソフト、サービスを組み合わせたものが求められているというトレンドがあります。われわれはイノベーションの観点で、そういったものにフォーカスしたいと思っています。ハードウェアはわれわれの重要なビジネスですが、今後、ソフトウェア、ソリューションの面でも差別化を図っていきます。APEXサービスは、いい形で伸びています。それがお客様からのサインで、お客様のビジネスにニーズに合っているということだと思います。
APEXのようなサブスクリプションモデルの商材が増えることは、経営的にどんなメリット/デメリットがありますか?
トム スウィート氏:われわれは、お客様に技術の選択肢を与えたいと思っています。それで、as a serviceモデルを提供しているわけですが、CFOの立場としては、継続して売上が立つというのは、キャッシュフローの安定性と予測性が高くなるというメリットがあります。そのため、as a serviceモデルを拡大していきたいと思っています。
2015年にHewlett Packardが分社化しましたが、分社化のメリット/デメリットをどう考えますか?
トム スウィート氏:お客様に包括的なソリューションを提供することが、お客様にとっても、われわれにとってもメリットがあると思っています。分社化にはメリットはないと思います。ポートフォリオ、イノベーションを起こしていく力は、大型のほうがメリットがあると思います。
今後、CFOとしてやっていきたいことはありますか?
トム スウィート氏:新しい成長分野の投資で、テレコムやエッジ、マルチクラウドなどです。私はCFOとして適切なペースで投資を振り向けていくということです。そして、成長分野で適切に、タイムリーにソリューションを提供していけるようにしていくことです。社内においては、より効率性を追求し、スキルの向上に向けトレーニング、ツールの提供などを行っていきたいと思います。