ニューホライズンコレクティブ(以下、NH)は1月26日、2022年の活動報告会を開催した。電通の100%出資子会社として2020年に設立された同社では、電通が提唱する仕組み「ライフシフトプラットフォーム(LSP)」を具現化する企業として、電通を40~50代で自主退職した元社員と最長10年間の業務委託契約を結び、プロフェッショナル人材として第二のキャリアに挑戦することを後押ししている。

当日は、NH 代表 野澤友宏氏から活動報告と合わせ、電通退職者以外にもLSPを展開していくことなどが発表された。

新たに「学びの場」を提供

NHでは、LSPに参加するミドル世代のメンバー217名(2021年5月1日時点)に対して「新しい学びの機会」「やりがい創出の機会」「新しい仲間づくりの機会」の3つの機会を提供するとしている。メンバーはこれらの機会を通じ、切磋琢磨しながら自身が広く活躍できる基盤を自分でつくっていくことになる。

その取り組みの一環として、2022年にNHでは「ライフシフトアカデミー」という学びの場を用意したという。

「特徴は2つあります。一つは一緒に学び合う仲間がいることです。学び合う仲間は、仕事仲間として実践の仲間となります。もう一つは、教えられる場があるということです。学んだ知識をアウトプットできる場でもあります」(野澤氏)

  • 野澤友宏氏

    NH 代表 野澤友宏氏

2022年は、マインドセットやスキルセット、資格取得について学ぶものなど、さまざまなジャンルのセミナーが合計128件開催され、延べ参加人数は5669人、一人当たりの平均セミナー参加時間は39.51時間という結果となった。

その後、メンバーを対象に行ったアンケートでは、「2022年の1年間に『学び』を実践したか」という質問に対し、91.8%が「はい」と回答。野澤氏は「学びの主な内容はビジネススキルに関するものだが、中には資格取得にチャレンジするメンバーもいる」とし、「リスキリングと呼ばれる潮流がある中で、面白い動きになっていると思う」と語る。

学びから生まれた成果はいかに?

では、こうした学びの成果は、どのようなかたちで表れているのだろうか。

NHではメンバーに業務委託はするが、決まった業務を委託しているわけではない。メンバーが自主的に案件を開拓し、メンバー同士で協業する仕事が多いのだという。

「もちろん、NHから機会提供もしますが、メンバー同士の動きが主となっているのが特徴。今まで電通の手が届かなかったところに、フットワークとネットワークで仕事をつくっていく場になっています」(野澤氏)

2022年度の実施案件は約1000件と、前年比125%の伸びを見せた。

その内訳としては、地方でのビジネスを行っているケースが54.6%に上るほか、中小企業をクライアントとするビジネスを行っている割合が約8割を占める。

例えば、伊藤園の「お~いお茶『茶畑エクスプレス』キャンペーン」を手掛けたほか、さかなクンとともに海や川などの環境を守る活動に注力する「SD BlueEarth・青い地球を育む会」の事業コンサルティング、災害支援用ドローンシステムの実証実験撮影など、活動分野は多岐に渡り、規模も大小さまざまだ。

こうした2022年のLSPについて満足度をメンバーに尋ねたアンケートでは、「満足している」「とても満足している」という回答が合わせて9割を超えたという。

リスキリングのゴールデンプロセス「Co-skilling」

なぜこうした満足度が得られているのかについて言及した野澤氏は、「ライフシフトのゴールデンプロセスを構築した」と語る。これは、ライフシフトをWhy(なぜやるのか)、What(何をやるのか)、How(どうやるのか)、Action(行動)の順に進めていくことを指す。

「ライフシフトを進めるには、仲間と学びの両輪が必要だというのは確信しています。そして、新しいことを始める際はHowから入りがちですが、『なぜやるべきか』というWhyから始めないと成功しません。我々は仲間でも学びでも、Whyから始めることを重視しています」(野澤氏)

学びに関しては、なぜライフシフトする必要があるのか、何をやるべきかを掘り下げた上で、独立・起業準備に必要なスキルを身に付けていく。仲間については、NHでは参加必須の「グループ」と任意参加の「サークル」から成るコミュニティが用意されており、交流を通じてなぜ会社を辞めたのか、何をやりたいのかをお互いが理解することで、より実践的な情報交換につながり、Actionにおいても助け合いが発生するとしている。

  • Whyから始まるライフシフトのゴールデンプロセス

「このゴールデンプロセスは、リスキリングのゴールデンプロセスでもあるのではないか」と野澤氏は続ける。学び直しを継続し、成果を上げるには、Whyから始まる良質な学びと、刺激し合い助け合う仲間が必要、というわけだ。

「これを私たちは新たに『Co-skilling(コ・スキリング)』として提唱していきたいと思います。リスキリングという言葉もありますが、ことライフシフトに関しては、皆で一緒にスキリングしていくことが大切です」(野澤氏)

NHでは同日、LSPを電通退職者以外のユーザーも利用できるように展開していくことを発表した。第一弾としては、日本たばこ産業を退職したプロフェッショナル人材1名がトライアルで参加し、Co-skillingを軸とした学び直しと新たなネットワーク形成、コラボレーションによる新たな価値の発揮にチャレンジするとしている。同時にトライアル参加者を50名限定で募集することも発表された。

「今まで大企業や都会に留まっていた高い専門性を中小企業や地方に対流させていきたい。NHの活動が社会的意義のあるものになることを目指していきます」(野澤氏)