1月17日付のロイターの報道によると、Tesla(テスラ)が自動運転技術を示すために作成した動画は、実際には自動運転していなかった--。Teslaのシニアエンジニアが訴訟で証言していたことが明らかになった。この訴訟は、Teslaの「Model X」に乗車中に事故で亡くなった元Apple社員のWalter Huang氏の遺族が、Teslaの運転支援システム「Autopilot」などに問題があるとして起こしていたもの。
2022年7月の証言録取で、TeslaのAutopilotソフトウェアディレクター、Ashok Elluswamy氏がTeslaの自動運転の宣伝について話していたことが、このたび明らかになった。
動画は、Teslaが2016年10月20日付で投稿したもの。動画は「運転席の人は、法律上の理由で座っているだけだ。彼は何もしていない。車が運転している」というメッセージで始まり、Model Xが自動運転する様子を収めている。
運転席からの映像、外からの映像、車が左・右などに装着するカメラが写す画像も入っている。車がガレージから出てくると、運転者が乗り込み、Tesla本社に向かうというもので、両手はハンドルに触れずに置いている。
車がTesla本社につき、運転手がロータリーで降りた後、自動で駐車スロットまで行って縦列駐車して終わる。Elon Musk氏も当時、この動画をツイートしていた。
証言録取でElluswamy氏は、この動画がどのように製作されたのかを明らかにした。それによると、TeslaのAutopilotチームはMusk氏の要請により、システムの能力をデモするためにエンジニアリングと記録をおこなったとのこと。
動画は3Dマッピング技術を用い、カリフォルニア州のメンロパークの住宅から当時Teslaが本社を構えていたパロアルトまで、事前に決められたルートで作成したという。テスト走行では運転手が介入して車を制御し、駐車の場面ではModel Xがフェンスにぶつかったことも明かしている。その場面はカットされたようだ。
Elluswamy氏は、動画の意図はシステムに組み込むことができるものを描写したものであり、「2016年時点で顧客が利用できる能力を正確に描写したものではない」と証言している。
この事故について、米国家運輸安全委員会は2020年にHuang氏の注意力散漫とAutopilotの限界が原因との見方を示した。
Elluswamy氏は、運転手は注意を払っていないのに、ハンドルからのフィードバックに基づいて注意を払っているように見せることができるとし、運転手は「システムを欺く」ことができると述べている。同時に、運転手がきちんと注意を払っているのであればAutopilotの安全性に問題はないとも述べているという。
なお、該当の動画は執筆時、Teslaのサイトに掲載されている。昨年末には株価が急落するなど今後が試されるTeslaだが、中国では人気モデルの価格引き下げにより販売台数が拡大している模様だ。