アドビは12月1日、創業40周年、日本法人設立30周年を記念して記者発表会を開催した。1982年にAdobe Systemsが設立され、1985年にページ記述言語「Adobe PostScript」を発表したのを皮切りに、「Adobe Illustrator」や「Adobe Photoshop」など、DTP関連のアプリケーションを次々とリリースし、市場を築き上げた。

その後、買収や市場の拡大に取り組み、現在は「Adobe Creative Cloud」「Adobe Document Cloud」「Adobe Experience Cloud」と3つのクラウドサービスを主力製品としている。

代表取締役社長の神谷知信氏は、同社の歴史を振り返りながら、「当社にとって、2012年にCreative Cloudをサブスクリプションモデルに切り替えたことが転換期となった。それまでは数年に一度アプリケーションのアップデートを行っていたが、サブスクモデルになったことで、アップデートを年に数回行って、お客さまに常に新しいアプリを提供できるようになった」と語った。

  • アドビ 代表取締役社長 神谷知信氏

神谷氏は、同社のビジョン「心、おどる、デジタル」を紹介し、このビジョンを実現するための施策を3つのクラウド事業に分けて説明した。3つのクラウド事業のうち、「Document Cloud」がここ2、3年で最も伸びているという。

  • ビジョン「心、おどる、デジタル」実現に向け、「クリエイティビティの解放」「ドキュメントの生産性の加速」「デジタルビジネスの強化」に取り組む

「Creative Cloud」は、プロのクリエイター、ビジネスユーザー、一般消費者をターゲットとしている。神谷氏は同製品について、「バージョンアップの速度が上がっており、機能も向上している。誰もが簡単に使えるように、Webとモバイルに対応することで、デバイスへの依存を減らす。そして、AIであるAdobe Senseiによって生産性を補う。コラボレーションを強化するため、Figmaを買収した。コラボレーションによって、お客様とデザイナーの生産性が上がる」と説明した。

PDFを中心としたデジタルドキュメントを活用するためのクラウドサービス「Document Cloud」は、PDFファイルや電子署名によって、新しい働き方を支えることを目指している。神谷氏は、Document Cloudの傾向として、大学での採用が増えていることを紹介した。

「Experience Cloud」は、「Adobe Marketing Cloud」「Adobe Advertising Cloud」「Adobe Analytics Cloud」から構成され、優れた顧客体験を提供するためのソリューションを提供する。神谷氏は、顧客体験管理はあらゆる業界で必要不可欠なものとなっており、顧客が連携できるよう、国外も含めてコミュニティを作っていくと述べた。

そして、神谷氏は次の10年の成長に向けた目標として、以下の5点を挙げた。

  • 新たな分野を創造してリードする
  • 顧客基盤の拡大
  • 革新的なテクノロジープラットフォームの提供
  • 世界規模のコミュニティとエコシステムの拡張
  • 世界最高水準の財務内容

国内においては、データとクリエイティブの観点から支援することで、「相談できるアドビ」という側面を強化する。顧客支援において「As is」を作る部門も新設するなど、リソースを増やして支援を厚くしていくという。

  • 国内では「相談できるアドビ」を強化する

続いて、常務執行役員兼CMOの里村明洋氏から、同日に発足した新たなプロジェクト「アドビ未来デジタルラボ」の紹介が行われた。同ラボは、「テクノロジーの未来」「コンテンツの未来」「ライフスタイルの未来」をテーマに掲げ、活動を行う。

  • アドビ 常務執行役員兼CMO 里村明洋氏

同ラボでは、「調査」「討論(ソーシャルリスニング)」「実証実験」「提言」を行う。同ラボは同社のメンバー、外部の有識者である開発者の及川卓也氏ら7人をプロジェクトメンバーのほか、ソーシャルリスニングから構成される。

外部の有識者を交えて討論しながら、世間の声にも耳を傾け提言していくという。里村氏は「あいまいな内容に終わることなく、具体的な解決策にまで踏み込んだ提言をしていきたい」と、新プロジェクトにかける意気込みを語っていた。

  • 「アドビ未来デジタルラボ」の主要メンバー