キロやギガ、ミリ、マイクロなど大小の量を端的に表すための国際単位系(SI)接頭語について、新たに10の30乗を表す「クエタ」、10の27乗「ロナ」、10のマイナス30乗「クエクト」、10のマイナス27乗「ロント」の4つが決まった。国際度量衡総会が決定した。デジタル情報の急増などを背景に、31年ぶりにSI接頭語が拡張された。

SI接頭語は10のべき乗を表し、単位と共に用いられる。産業技術総合研究所によると従来、10の24乗「ヨタ」から10のマイナス24乗「ヨクト」の範囲の接頭語が認められてきた。科学技術の発展を受け、拡張が議論されてきた。

 4つの接頭語はフランス・ベルサイユで開かれた第27回国際度量衡総会で、日本時間18日に採択され同日、閉会と共に発効した。同総会は単位の確立と国際的な普及を目的とした「メートル条約」に基づき設置された最高機関で、ほぼ4年ごとに開催されている。国際度量衡委員会は同総会の決定事項の代執行機関で、理事機関の役割を果たす。

 決定には慣例や利便性が考慮された。まず記号のアルファベットは、既にSI接頭語で使われている文字は除外した。単位などで記号に使われている文字、例えばビットやバイトと紛らわしい「b」「B」 、 虚数や数字の1と間違いやすい 「i」「I」、掛け算の記号と見分けがつかない「x」も除外した。この結果、「q」と「r」に絞られた。

 さらに慣例に従い、ラテン語やギリシャ語の単語を参考にした。また1975年以降の決定と同様に、正の指数を持つものは「a」で終わり、負の指数を持つものは「o」で終わることとした。指数の絶対値が等しい接頭語の記号は同じアルファベットを使い、また正の指数は大文字、負の指数には小文字を使うことを原則とした。

 その結果、10の30乗はクエタ (quetta)で記号は「Q」、10の27乗はロナ(ronna)で「R」、10のマイナス27乗はロント(ronto)で「r」、10のマイナス30乗はクエクト(quecto)で「q」に、それぞれ決まった。

 今回の拡張により、SI接頭語は60桁に及んだ。同委員会の幹事の一人で、産総研の臼田孝執行役員(計量標準総合センター長)は総会に先立つ9月の会見で「現在、ナノテクノロジー、フェムト秒レーザーといった言葉がある。これまでもマクロやミクロへの科学技術の発展に先んじて、このようなSI接頭語が決められてきた。使われる前に呼称を用意しておかないと、必要になった段階で混同してしまう。今回の拡張により、素粒子レベルから宇宙の果てまで、人間の認識する空間全てを包含すると思う。そこまで科学のフロンティアが来ている」と述べた。

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    SI接頭語(産業技術総合研究所提供、一部改変)

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