Okta Japanは10月14日、オフラインとオンラインのハイブリッド開催により、同社が推進する働き方「Dynamic Work」にもとづく、新オフィスに関する記者説明会、見学ツアーを実施した。
Oktaが定義する「Dynamic Work」
同社が提唱するDynamic Workとは「社員にとって最も合理的な場所で働く選択肢や時間の柔軟性を維持しつつ、社員同士のコラボレーション、コミュニティ形成の機会を最大化する働き方」と定義している。
米Okta Chief People and Place Officer(最高人材開発責任者)のKristina Johnson(クリスティーナ・ジョンソン)氏は「ハイブリッドワークとダイナミックワークは似通っているように思えるが、すべての従業員体験をライフサイクルを通じて考慮するものだ」と述べた。
同社がDynamic Workを取り入れた経緯としては、生活費の高騰や長時間の通勤時間、すべての企業のテクノロジーカンパニーへの変化、世代移行による期待値の変化など、マクロ経済のトレンドは採用、仕事、従業員を維持する方法の変化をはじめとしたインパクトを与えているほか、こうしたトレンドはグローバルなパンデミックにより加速・激化しているからだという。
一方、2025年にはOECD諸国の労働人口の27%がZ世代になり、ハイブリッドワークを希望する同世代とミレニアル世代はグローバルで60%以上、日本でも50%弱に達していることに加え、両世代は組織内での気候変動対策も積極的に求めており、次世代を見据えた備えが必要だとしている。
そのため、同社は2019年に従業員がどこで働いても最も生産的になれるようにすることを目標にDynamic Workの試験運用を開始し、2020年春の新型コロナウイルスの大流行時に加速させた。
単なるリモートワーク、ハイブリッドワークではない働き方
ただ、同氏は「加速させたものの、単純にリモート、ハイブリッドで仕事をするのではなく、柔軟かつ選択肢を与えるものとして、戦略の再調整が必要となった」と話しており、そのため同社は(1)柔軟な働き方ができるワークプレイスの再設計、(2)優秀な人材を居住場所問わずに採用、(3)生産性の高い業務とコラボレーションを可能にするテクノロジーの導入、(4)社員のウェルネスへの再投資を行うこととした。
ワークプレイスの再設計では、オフィスでの常勤は大半の社員にとって義務ではなく、必要な時に利用できるリソースとし、テクノロジーに対応したスペースは社員が柔軟性と選択肢を持ち、仕事をすることを可能とした。
その一環として、人流センサなどさまざまなセンサを設置することでオフィススペースの利用状況を測定し、職場設計の参考としての活用や会議室の予約と実際の利用状況を分析などを行っている。
優秀な人材採用については、居場所を問わず柔軟性を反映した求人の掲載、多様で幅広いタレントプール、低コスト市場での人材を獲得する柔軟性を持った採用の考え方にシフトさせた。結果として、過去2年間の採用者のうち約6割がリモート勤務採用となっている。 テクノロジーの導入に関しては、クラウドツールへの投資、デジタルホワイトボードやワークステーションなどのオフィスで導入するハードウェアを再考した結果、99%の社員が在宅勤務で生産性を向上させるために必要なツールが揃っていると感じているようだ。
社員のウェルネスへの再投資では、日中の勤務時間や居住する場所と働く場所、オフィスで仕事をする頻度・時間、休息時間について柔軟性を提供しているという。また、サステナビリティへのコミットメントとして同社の新オフィスはすべて建築や都市の環境の環境性能評価システム「LEED Siver」、人々の健康とウェルビーイングに焦点を合わせた建築や街区の環境の性能評価システム「WELL Silver」の両認証の採用を予定。
センサなどを設置してデータを活用する新オフィス
次に、Okta Japan 代表取締役社長の渡邉崇氏が新オフィスについて説明した。同社は2020年9月に設立し、渋谷スクランブルスクウェア38階(WeWork)に入居、2022年2月に買収したAuth0とともに同一施設内で移転、そして今年10月に渋谷ヒカリエ30階に移転した。
Okta JapanにおけるDynamic Workの状況として、居住場所は青森、大阪、神奈川、埼玉、千葉、東京、長野、兵庫、福島、シドニー、シンガポール、メルボルンなどとなっている。
また、日本だけに限らず、モニタやキーボード、机・椅子、ヘッドセットをはじめホームオフィス用品を社員の判断で購入できるオンラインストアを開設。さらに、自宅のインターネット費用と携帯電話費用を会社側で負担し、社員が働く時間を柔軟に選択できるようにしている。
これにより、95%の社員がDynamic Workを指示し、92%が自宅での仕事で必要なテクノロジーやツールが備わっていると実感しているようだ。
その理由としては各家庭の事業に応じて働くことができ、不要な出勤時間・移動時間をなくせるという。働く場所の選択ができるとともに時間に制約されずに、仕事の効率や生産性を高めることができるとともに、ワークライフバランスや心のバランスを保ちやすいという意見があったという。
ただ、コミュニケーションが不足し、孤立もしやすく、社員同士の心理的安全性を構築することに時間を要し、直接触れ合う機会が少ないといったことも課題として挙がっている。
新オフィスのデザインプロセスについて、渡邉氏は「センサで収集したデータを活用し、フォーカスグループによるニーズの特定とオフィススペース計画を調整した。また、グローバルのデザインガイドラインをべースに会議室名や壁画アートワークなどはローカルらしさを表現した」と説く。
新オフィスは、来客スペースに壁画アートワークや会議室、執務スペースは基本的にフリーアドレスとし、座りながら仕事をする一般的なデスクやスタンディングデスクなどがある。
また、出勤した人やオンラインの人がWeb会議システムを通じたコミュニケーションを取るためのコラボレーションシステムや、ホワイトボードシステム、フォーンブースなどを配置し、Zoom Rooms標準装備の会議室も備えている。