光星学院は青森県八戸市を中心に幼稚園3校、高校(八戸学院光星高等学校、八戸学院野辺地西高等学校)、短大(八戸学院大学短期大学部)、大学(八戸学院大学)など7つの学校・幼稚園を運営する学校法人だ。すべてを合わせると生徒数は約2400名で教職員は約400名在籍する。
同校ではもともとシステムされているのは、校務システムのみで、その後、経理システムはMicrosoft Aceessなどで構築されていたという。
「もともと校務システムしかなったので、各部署からシステム化の依頼はありました。それをパッケージに実現しようとすると2000万ほどかかることがわかりました」と、システム化するにも予算なく、パッケージは導入できなかったと語るのは、総務部 情報システム室の出町望氏だ。
そこで、セミナーに参加したことがきっかけで、サイボウズのkintoneに興味をもち、自らアプリを開発することを決断したという。
とはいっても、出町氏はもともと図書館スタッフで、2019年に総務部情報システム室が新設されたのに合わせ、図書館スタッフから配置替えになった。それまでプログラミングの経験はなかったという。
「当初は大変でしたが、データベースの本を読んだり、kintoneのセミナーに参加するなどして、勉強しました。プログラミング経験もなかったので、事例を調べて真似することで構築していきました」と出町氏は話す。
まず、手掛けたのは経理システムで、立替請求明細の廃止にも取り組んだ。
「もともと経理システムはMicrosoftのAccessを使っていましたが、それをここ2年でkintoneに置き換える作業をしていました。教員の方は立替払いが多く、そのお金を精算する際は、現金と一緒に明細を付けて渡していました。その明細をつくる作業に時間がかかっていました。それを、先生にログインしてもらい、kintone上の明細を見てもらうようにしました」(出町氏)
また、最近では、制服販売会予約システムも構築したという。
制服販売会予約システムは、高校入学時に購入する制服の販売会に参加する時間を予約するものだ。以前は、集中日を決めて、採寸も含めて一斉に行っていたが、コロナ禍でそれができなくなった。また、以前は生徒と保護者の待ち時間が長く、大混雑していたという。原因は、来場日時が決められてなく、好きな時間に来場できたため、人数を分散できなかった点や、注文伝票の記入や会計など、採寸以外の作業が多かったため、3時間ほど待たせるケースもあったという。
新システムでは、QRコード付きの資料を入学者に送り、それを読み取って、トヨクモのFormBridgeで作成したフォームから、予約日時を入力してもらう仕組みにした。
このシステムでは、予約日時を入力すると、入学者それぞれに「Myページ」が作成され、そこに購入する制服の数を入力してもらうようにしたという。Myページでは、予約日に会場で入場するためのQRコードも発行される。
これにより、時間のかかる作業はシステムで完了するため、当日の混雑が解消されたという。
当初は、ネットが使えない人も中にはいるのではと心配したが、中学生のネットリテラシーは高く、とくに操作説明書を作ったわけではなかったが、問題なく利用できたという。
また、今年からは短大、大学の出願でもWebによる方法に切り替えた。
「いま、Web出願は普通だと思うのですが、地方の中小規模の大学では、まだ入っていないところがあります。本当はパッケージを購入したかったのですが、高額でkintoneでやってみようと思いました。これまでは、紙で受け付け、手で1つ1つ入力していました。担当も一人なので、残業だらけになります。学校情報や住所などの入力が必要なくなるだけでも、かなり手間が減りました」(出町氏)
受験案内や発送費用などもなくなり、コスト的にも大きなメリットがあるという。
そのほか、各部門の予実管理や大学の研究室における研究費の残高確認もシステムで行えるようにしたほか、スポーツ推薦などで入学した場合の割引率を加味した学費計算(学納金システム)もグレープシティのkintoneのプラグインである「Krew」で計算するようにした。
実際の経費の削減額は、パッケージを導入すると1500万円ほど必要だったが、kintoneや関連ツールのライセンス料の230万円ほどで済んでいるという。また。これまで移行後に停止した校務システムの年間保守費用、95万円も不要になったという。
同校では、今後もkintoneを活用した内部開発で、徐々にシステム化を図り、複雑化してしまっている大学短大部門での申請業務(出張申請など)の業務整理・システム化、学生サポートなどの事務業務のシステム化を進めていく予定だ。