中国電力ネットワークと富士通は10月12日、ダイナミックレーティングの実現および送電設備の保全業務高度化に向けたドローンの活用を見据えて、中国電力ネットワークの送電設備を活用して取得した風況などの環境データの実用性について、2021年9月から1年間の実証試験を実施したことを発表した。
送配電事業者においては、電力の安定供給を維持するための保安業務のうち特に送電設備の巡視点検業務は膨大な労力と時間を要するため、ドローンなどのICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を活用した保安レベルの維持・向上や保全業務の高度化に向けたスマート保安が進められている。
今回の実証実験では、中国電力ネットワークの変電所などにおいてOPGW(Optical Ground Wire:光ファイバー複合架空地線)振動測定用の光ファイバーの測定装置や計算用コンピュータなど機器一式を設置し、ミリ秒単位の振動データを数メートル間隔で全長70キロメートルにわたって取得した。
その振動データから富士通のデータ変換技術を活用して環境データ(風況)や送電線温度を推定し、これらのデータをドローンの運航支援やダイナミックレーティングに活用するための検証を行った。その結果、取得した環境データ(風況)と現地に設置した風速計の実測データが概ね一致していることが確認できた。
これにより、実証試験で活用した技術が、起伏によって風況が複雑に変化する山間部においても正確かつ効率的なデータ取得を実現し、ドローンの飛行可否の判断や風況を考慮した飛行ルートの選定にも適用可能であることが示されたとのことだ。
また、推定した環境データ(風況)と鉄塔に設置した各種センサーで実測した日射量および外気温、実際に送電線に流れる電流値をパラメータとして温度データに変換し、送電線の温度を推定したところ、赤外線サーモグラフィカメラで測定した送電線の温度とおよそ一致することも確認した。
これらの結果より、広範囲に設置されている送電線近傍の環境データを効率的かつ正確に取得できるようになるため、ダイナミックレーティングやドローンを活用した巡視点検への適用拡大も見込め、再生可能エネルギーの導入拡大や送電設備の保全業務のさらなる高度化が期待できるのだという。
さらに、富士通は今回の実証試験によって得られた環境データや送電線の温度などの推定データを、送電設備に合わせて地図上に可視化する送電網高度運用支援のプロトタイプシステムを作成したという。