富士通は9月1日に、顧客のDX(デジタルトランスフォーメーション)の支援を目的として、既存の情報システムのあり方を見直して最新化する「モダナイゼーションサービス」を強化すると発表していた。このほど、同社は同サービスの方針について記者説明会を開催して、詳細を紹介した。

ビジネスを取り巻く環境の変化が著しい現代は、既存の価値観やビジネスモデルなどが通用しなくなる、いわゆる「VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性の各頭文字を取ったもの)の時代」とも呼ばれている。

VUCAの時代において持続可能な企業経営を実現するためには、アジリティ(機敏性)とレジリエンス(回復力・しなやかさ)の両立が重要だ。そのためにも、多くの企業で既存の情報システムのモダナイゼーションが喫緊の課題となっている。このような状況に対し、富士通はモダナイゼーションへのアプローチを刷新するに至ったとのことだ。

長期間運用されているシステムは、技術の老朽化やシステムの肥大化、ブラックボックス化などさまざまな問題が顕在化している例が多い。また、業務ごとにシステムが最適化された結果、サイロ化が問題となっている例もある。その結果、システムを改修する際に多くの時間やコストが必要となり、アジリティが低下する要因となる。

そうした中、富士通はこれまで蓄積してきた同社のノウハウや技術を軸として、企業のモダナイゼーションを支援するための体制整備に着手した。モダナイゼーションサービスを強化して体系的なアプローチで対応するだけでなく、新たにCoE(Center of Excellence)として機能するモダナイゼーションナレッジセンターを新設する。ここでは有用な技術やノウハウ、事例などを収集して、顧客企業に提供するとのことだ。

  • 富士通によるモダナイゼーションのための実施内容

    富士通によるモダナイゼーションのための施策

モダナイゼーションサービスの強化にあたっては、DXに向けた基盤整備の位置付けとして、同社がこれまで提供してきたサービスを再設計する。モダナイゼーションを実現するために、具体的には「業務・資産可視化」「グランドデザイン」「情報システム全体のスリム化」「モダナイズ」の4つのプロセスで推進する。

業務・資産可視化では、モダナイゼーションの準備段階として顧客企業内の情報システム資産などを調査し可視化する。ビジネスプロセスにおけるボトルネックや、データ構造・アプリケーション構造やその依存度も可視化し、適切な移行方式やモダナイゼーション手法の検討へとつなげる。

ビジネスプロセスの可視化においては、プロセスマイニング技術などを使用して、既存の設計書や現場へのヒアリングだけでは正確に把握しづらい業務の動作状況を確認する。また、実際のオペレーションの中で時間がかかっている作業や、多くの手戻りが発生している作業などを可視化するという。

  • 業務・資産可視化の概要図

    業務・資産可視化の概要図

グランドデザイン策定の段階では、全体最適化を目的として、経営ビジョンに基づいてビジネス戦略とIT戦略の整合性が取れたあるべき姿を描く。反復的な変革プロセスを通じて、段階的なモダナイゼーションの計画策定とケイパビリティ向上につなげるとしている。

将来像については、既存のシステムをベースとした積み上げ型(フォーキャスティング)のアプローチではなく、あるべき姿からの逆算型(バックキャスト)で計画を立案する。段階的な移行ロードマップを示すために、経過目標となる「Next」を設定する。

  • グランドデザイン策定の概要図

    グランドデザイン策定の概要図

情報システム全体のスリム化にあたっては、これまでの可視化の成果やグランドデザインに基づいて、既存のシステムの中でほとんど使われていないにも関わらず稼働しているような、アプリケーション資産やデータベースの整理を実施する。

  • 情報システム全体のスリム化の概要図

    情報システム全体のスリム化の概要図

最終段階として、各社の資産の状態に応じてリライト、リホスト、システム再構築(リビルド)、SaaS(Software as a Service)などへのサービス移行を実施する。ここでは移行方式やコスト、移行期間などを具体的に示しながら、各社の要望に応じたモダナイズ実行支援まで対応する。

  • モダナイズの概要図

    モダナイズの概要図

富士通が新設するモダナイゼーションナレッジセンターでは、CoE機能を有する専門組織として、モダナイゼーションに関わる国内外のベストプラクティス情報や、ツールの活用事例、ノウハウ、知見などを積極的に集約する。集約した情報に基づいて適切な支援を提供できる仕組み作りを進めるという。

  • 富士通はモダナイゼーションナレッジセンターを設立する

    富士通はモダナイゼーションナレッジセンターを設立する