KDDI総合研究所、KDDI、三重県鳥羽市は8月23日、6月8日と6月9日に実施した、水上ドローンを活用してブルーカーボン算定に必要な藻場調査の実証実験の結果を公表した。今回の実証は海草や海藻の分布面積調査を水上ドローンで効率的に行うことを目的として、鳥羽市の菅島および答志島沿岸にて実施した。

実証に利用した水上ドローンはスマートフォンで設定した航路を自律航行し、搭載した水中カメラで対象の藻場を撮影した。実証の結果、撮影映像の分析により海草や海藻が占める面積の割合である「被度」の把握が可能なことが確認できたという。

  • 水上ドローンの外観

    水上ドローンの外観

  • 鳥羽市菅島および答志島

    鳥羽市菅島および答志島

ブルーカーボン量は「対象生態系の分布面積」と「吸収係数」の積から算定するものであり、ブルーカーボンを定量化して取引可能なクレジットにする「Jブルークレジット」の審査認証・制度設計を推進するジャパンブルーエコノミー技術研究組合は、「対象生態系の分布面積」に関して現地調査を求めている。

  • 鳥羽市菅島および答志島

    鳥羽市菅島および答志島

KDDI総合研究所が開発した水上ドローンはスマートフォンで遠隔制御が可能であり、今回の調査にあたって、新たに水中カメラと、そのカメラを水中で昇降するための装置を搭載している。また、GPS(Global Positioning System)を搭載しており自律航行も可能。

ドローンが藻場がある地点に着くと、定点を保持しながら操作者はスマートフォンで昇降装置を遠隔制御してカメラを水中に下ろす。水中の映像はモバイル回線を経由してスマートフォンに伝送されるため、操作者はリアルタイムで水中の様子を確認できるのだという。

実証で撮影した水中映像から、画像処理技術を用いて海草や海藻の色(緑、青、赤など)の濃淡を判別し、海草・海藻と認められる領域のみを抽出したところ、被度の算出が可能であることを確認できたとのこと。

  • 被度の算出例(答志島沿岸の藻場)

    被度の算出例(答志島沿岸の藻場)

  • 被度の算出例(菅島沿岸の藻場)

    被度の算出例(菅島沿岸の藻場)

KDDI総合研究所、KDDI、鳥羽市の3者は、三重県内の5G(第5世代移動通信システム)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)など先端技術を活用した水産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)として、「海洋DX」の積極的な展開を目指し、2021年3月に県内の他機関を含めて連携協定を締結している。3者は今後について、同地域での実証実験を継続し藻場保全の課題解決に取り組んでいくとしている。