EYストラテジー・アンド・コンサルティング(EYSC)は8月18日、これまで提供していた「経済安全保障を起点とした企業経営リスクマネジメント支援」に、新たに企業が有事に想定すべきリスクシナリオをシミュレーションし、対策を検討する「国際情勢の未来リスクシミュレーションに基づく実践的BCP(事業継続計画)立案支援」を追加したと明らかにした。

冒頭、EYストラテジー・アンド・コンサルティング ストラテジックインパクト パートナーの西尾素己氏は「大国・地域は軍事のみならず、ITを含めた経済でも自国に有利なルール形成を進めており、国内における産業競争力の維持には世界動向をふまえた対応が必須だ。そのため、現在の延長戦では想定できない非連続な未来に対しても、最新動向のモニタリングにもとづく国際情勢をシミュレーションし、アクションを見出す必要性がある」と説明した。

  • EYストラテジー・アンド・コンサルティング ストラテジックインパクト パートナーの西尾素己氏

    EYストラテジー・アンド・コンサルティング ストラテジックインパクト パートナーの西尾素己氏

また、日本では経済安全保障推進法案が今年5月に成立し、重要物資の安定的な供給に向けたサプライチェーンの強靭化や先端的な重要技術の確保といった観点で、企業は政府が今後定める規制措置に対応していくことが求められているという。

そこで同社では、このような状況に鑑み、各国政府の情報機関やシンクタンクにおいて、安全保障分野における有事シミュレーションや外交シミュレーションに携わってきた専門家が、さまざまな歴史的な意思決定の変遷や国際関係理論などに基づいて、企業が直面する可能性のある未来のリスクシナリオを立案する国際情勢の未来リスクシミュレーションに基づく実践的BCP立案支援を提供する。

  • 「国際情勢の未来リスクシミュレーションに基づく実践的BCP立案支援」の概要

    「国際情勢の未来リスクシミュレーションに基づく実践的BCP立案支援」の概要

同社によると、非連続かつ経済合理性をないがしろにする新たな現実を生み出す地政学リスクの中で、持続的な成長を続けるには、受け身ではなく、能動的な機先を制する対応を計画しておく必要があるとしている。

その際、各国において水面下で行われている政策協議について、質の高い一次情報を把握し、政策化される前の段階で予兆を把握することで、経営へのインパクトとして解釈する経済インテリジェンスが重要だという。

さらに、リスクシナリオも教科書的な事象ではなく、各国の重要人物の発言、政府機関などが発信する情報、世界各地で発生する事故などを分析することがポイントだと、同社は指摘する。

そのため、想定される有事から企業が直面する可能性のある未来のリスクシナリオに対する実践的なBCPを立案するとともに、シナリオが発現した場合、各企業の特性に合わせた影響分析、影響の回避、最小限に抑えるために採るべきアクションのロードマップ化についても支援する。

同社が従来から提供している経済安全保障を起点とした企業経営リスクマネジメント支援は、各国の経済安全保障政策に基づく方針や規制に対応する守りの対応だけでは十分ではなく、経済安全保障の動向や情勢をとらえ、自社の対応を業界ルールにしていくなど、経済安全保障をテコに国際情勢を成長機会に転換する攻めの対応も必要となり、企業の競争優位を確保する守りと攻めの両方を包含するコンサルティングサービスとして提供している。

なお、同サービスでは「経済安全保障インテリジェンスに基づくアセスメント・対策ロードマップ立案支援」も提供している。

同支援では企業の国際情勢に対するレジリエンスを向上させることを目的とし、個別の状況に合わせた現状のアセスメントから、対応計画の策定、実際の導入まで一気通貫で支援。

アセスメントでは、法制化されている各国政府や国際機関による最新の法規制やガイドライン、各国議会やシンクタンクで議論されている最新の政策動向にもとづいて、企業のバリューチェーン、およびオペレーション基盤の観点で250項目以上の経済安全保障要件を特定している。

加えて、企業それぞれの事業の特性に合わせて重要論点を特定し、経済安全保障情勢に対する構造的な弱みと、この情勢を機会に転換しうる強みを明確にしたうえで、効率的な対応を提案するとしている。

  • 「経済安全保障インテリジェンスに基づくアセスメント・対策ロードマップ立案支援」の概要

    「経済安全保障インテリジェンスに基づくアセスメント・対策ロードマップ立案支援」の概要