日本DPO協会は7月5日、プライバシー保護人材育成のための資格認定制度および教育プログラムを創設し、2022年10月から資格試験制度を開始することに先立ち、記者説明会を開催した。説明会では、同協会の代表理事の堀部雅男氏、代表理事特別補佐の柳池剛氏、理事の杉本武重氏がその取り組みを説明した。本稿では、詳しく認定資格制度の仕組みとその必要性について紹介しよう。

  • 左から、日本DPO協会の代表理事特別補佐の柳池剛氏、代表理事の堀部雅男氏、理事の杉本武重氏

昨今、テクノロジーの進化に伴い生活や行動の多くがデータ化され、特定の国にとどまることなく、世界中のさまざまな国・地域に流通し活用されることが増えている。こうした背景を踏まえ、多くの国はプライバシー保護に関する法整備を行い、自国外の企業に対してもデータ保護法・個人情報保護法の適用対象とし、違反企業には巨額の罰金を科す傾向にあることから、今回発表された3つの資格の設置が進められたという。

日本でもプライバシー保護人材に対する需要が高まっているものの、そのような人材は海外に比べると稀有な状態であり、日本内外のデータ保護法・個人情報保護法や多様な現代テクノロジーに対する高度な理解が求められるため、育成するのも容易ではない。したがって、プライバシー保護人材の育成は、多くの企業・行政機関・地方公共団体にとって共通の課題となっているという。

これらの課題について、柳池氏は「人手が足りないことを理由に雇用するにもかかわらず、ポテンシャル採用などをしていては、逆に研修に人手と時間を取られ、忙しくなってしまうという日本企業の現状がある」と説明していた。

今回設置が発表された「プライバシー保護人材育成のための資格認定制度」は、プライバシー保護の資格認定制度として、「日本DPO協会認定データ保護実務者(プライバシーホワイト)」「日本DPO協会認定データ保護スペシャリスト(プライバシーゴールド)」「日本DPO協会認定データ保護オフィサー(プライバシーブラック)」の3つのレベルが用意される。

  • 「プライバシー保護人材育成のための資格認定制度」の3つの資格の概要

3つの資格の名称に色が含まれている由来について、杉本氏は「最上位の資格である『プライバシーブラック』は、柔道の黒帯が熟練者であるところからきています。また、『プライバシーホワイト』は、白帯が初心者というところから分かりやすくこの色を採用しました」と紹介していた。

「プライバシーホワイト」は、グローバルで強化されるプライバシー保護規制の全体像や歴史、用語を理解した上で、日本の個人情報保護法、マイナンバー法、プライバシーマークやEUのGDPR(一般データ保護規則)などの外国のデータ保護法・個人情報保護法の実務対応に必要な知識を包括的に学び日々の業務にすぐに生かせる資格。また、令和3年改正により行政機関・地方公共団体も個人情報保護法の適用対象となるため、プライバシーホワイトは民間部門向けと公的部門向けの2種類を用意しているという。

この「プライバシーホワイト」は、杉本氏の説明からも分かる通り、初心者向けの入門編のような資格となっている。受験資格も15歳以上からと広く、日本語の理解が可能であれば誰でも受験できる。

堀部氏は「企業の研修の一環として、到達度を測るために実施されても良いと思いますし、今後データ保護人材の需要が高まっていくことを考えて学生の方にも受験していただきたい資格です」と、その資格のターゲットの広さをアピールしていた。

「プライバシーゴールド」は、「プライバシーホワイト」から少しレベルアップした資格で、個人情報保護法(民間部門・公的部門)やEU GDPR、米国法、中国法、AI、プライバシープログラムといった専門分野において実務対応が行える人材の育成を行う。「プライバシーホワイト」の資格を保有していることと認定教育事業者による専門教育を受けた人が、この資格の受験資格対象にあたる。

また、「プライバシーブラック」はDPO(Data Protection Officer)やCPO(Chief Privacy Officer)として必要十分な能力を有することを認定する資格で、最も専門的な知識を有するもの。専門知識のほかにデータ保護人材としての心構えを語る論文の試験や口述試験など、高度な内容の試験をパスすることでこの資格を取得できるという。

この3つのレベル別の資格について、同協会は「プライバシー保護実務家に向けての第一歩として、プライバシーホワイトを取得して現場の実務対応ができるようになり、プライバシーゴールドでより専門性の高い業務で必要となる知識を十分につけ、グローバルでのプライバシーガバナンスを担える人材としてプライバシーブラックを取得するようなプライバシー保護人材がステップアップできる資格制度となっています」と説明している。

また、今回の資格の設立に合わせて「認定教育事業者」として、企業・行政機関・地方公共団体におけるプライバシー保護の実務家を育成するための教育プログラムの提供に協力してもらえる事業者も募集する予定だという。

この「認定教育事業者」は、教科書を使った自己学習が基本な同資格において、より効率的に要点を習得したいという企業・行政機関等・地方公共団体のニーズにも応えられるよう、その集中教育プログラムを用意する事業者のこと。

今後は、2022年9月に資格試験の勉強専用の教科書を提供開始し、「プライバシーホワイト」の試験を2022年10月に開始した後、3か月おきを目安に受験できる資格を増やし、2年後に「プライバシーブラック」までを解説していく方針。またこの資格試験は、日本全国の350カ所の試験センターで毎日受験ができるようになるという。