今日、国をあげて、DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいるが、DXの成否を分けるポイントの一つにデータ活用がある。企業は多くのデータを抱えていることから、それらを活用して、新規ビジネスを創出したり、顧客エンゲージメントを高めたりしようというわけだ。

とはいえ、データの活用は容易ではなく、円滑に進んでいない企業も多いだろう。日本企業において、身近でありながら価値が高いデータに名刺がある。今回、AI音声認識を活用したサービス、ソリューションの開発・提供を行う アドバンスト・メディアの取締役 執行役員 事業本部長を務める大柳伸也氏に、同社における名刺データの活用について聞いた。

  • アドバンスト・メディア 取締役 執行役員 事業本部長 大柳伸也氏

名刺のデータ化のきっかけは「ペーパーレス」

紙の名刺を個人で管理する上では、「個人情報が漏洩するリスクがある」「顧客データを共有できない」「管理に手間がかかる」「管理する場所が必要となる」など、さまざまな課題がある。

アドバンスト・メディアではペーパーレスの一環として、3・4年前から、名刺を電子データとして管理しているそうだ。名刺をデータ化する前は、「誰がどの企業を訪問しているかがわからない」といった課題があったそうだ。そのため、ある企業を訪問した際、別な人が訪問済みといったことが起きていた。

しかし、名刺管理サービスを導入したことで、「『誰がどこで会った』ということがわかるようになりました。また、ある企業にアプローチしたいけれど接点がない場合、その企業にコンタクトできる人を社内で探すことができるようになりました」と、大柳氏は話す。

名刺をデータ化する際にぶつかる壁に「名刺は自分のもの。だから、開示したくない」という、個人所有の意識がある。当初、同社でもそういう風潮はあったが、名刺管理サービスを使っていくうちに、「名刺を共有する」というカルチャーが浸透していったそうだ。

展示会の来場者へのお礼メールの送信にかかる時間も削減

アドバンスト・メディアでは、名刺をもらったら、すぐにスキャンしてクラウドにアップロードするようにしている。部署によっては、営業事務の人がスキャンしているそうだ。大柳氏は、「紙の名刺の場合、もらったら整理しなければいけませんが、名刺サービスなら、スキャンするだけでデータとして使えるようになるので、営業スタッフは名刺管理にまつわる手間が低減されたようです」と語る。

また、展示会に出展した際、来場した人から取得した名刺を管理サービスに入力して、CSVファイルとして出力し、お礼のメールを送信しているそうだ。「名刺管理サービスの導入により、お礼のメールを送信するスピードが速くなりました」と大柳氏。

名刺管理サービスというと、顧客管理というイメージが強いが、イベント来場者の管理においても、有効活用することができるようだ。

さらに、同社では名刺管理サービスとCRMプラットフォームである「Salesforce」を連携させている。これにより、名刺管理サービスのデータがSalesforceに反映されるため、Salesforceにおける顧客管理が容易になったそうだ。「名刺データがそのまま顧客データに反映されるので、間違いもない」と、大柳氏は話す。

セールスに名刺データを活用していきたい

大柳氏に、名刺データの今後の活用について聞いてみたところ、「データが蓄積されているなら、セールスに活用しない手はない」との答えが返ってきた。

名刺データの活用法はさまざまだが、前述したように、まずはSalesforceとの連携を強化していくことが考えられる。大柳氏は、「当社が利用している名刺管理サービスでは、メールの情報をダッシュボードで見ることができますが、これはSalesforceでもできています。そうなると、顧客の属性を細かく入れるなど、Salesforceの顧客情報をブラッシュアップしていきたいですね。また、パートナー企業かユーザー企業かを区別するといったこともできるとうれしいです」と話す。

売上を上げるカギの一つに、顧客を深く理解することがある。名刺データとSalesforceの連携により、顧客を理解するために必要な手間を低減するとともに、これまで把握できていなかったことも見えてくるかもしれない。アドバンスト・メディアのチャレンジは続く。