6月16日~17日、ガートナージャパンによる「2022 Application Innovation & Business Solutions Summit - Japan」が開催された。本稿では「データ活用にまつわるよくある悩みへの処方箋」と題して、同社のリサーチ&アドバイザリ部門 マネージング/バイス プレジデントの堀内秀明氏が登壇したセッションの内容をレポートする。

  • ガートナージャパン リサーチ&アドバイザリ部門 マネージング/バイス プレジデント 堀内秀明氏

目的を明確にし、必要な役割を洗い出す

データ活用に関しては、多くの企業がさまざまな悩みを抱えていることだろう。例えば、ガートナージャパンが日本国内の企業に「データ利活用によるビジネス成果獲得の阻害要因」を聞いた調査結果では、57.9%の企業が「関連スキルや人員の不足」を挙げている。同社に寄せられる問い合わせでも「データ・サイエンティストが必要だと理解しているが、どのように育成すれば良いのか」「分析の専門家がいない中、データ活用を推進し、成果を出すにはどうすれば良いか」といった、データの利活用に必要なスキルや人材の不足に関する内容が多いという。堀内氏はこのような課題に対し、「そもそも何のために、どのようなスキルや人材が不足しているのかが不明確な場合が多い」と警鐘を鳴らす。

ガートナーでは、データとアナリティクスに欠かせない役割を15種類設定している。

  • データとアナリティクスに欠かせない15の役割/出典:ガートナー(2022年6月)

これら全ての人材を配置することができれば理想ではあるが、現実的ではない。そこでまず、サポートに関する役割、データに関する役割、アナリティクスに関する役割という3つの大まかな役割のうち、「どこが足りていないことが問題となっているのかを明確にすることが大切だ」と堀内氏は説く。それにはまず、足りていない役割を洗い出し、早急に強化や補充が必要かどうかという緊急性、育成候補者となるポテンシャル人材が社内にいるかどうかなどを判断し、内部での育成と外部からの調達を組み合わせるかたちを採ると良いそうだ。

「データ活用に関するスキルや役割は多岐に渡ります。その全てを一気に強化しようとしても、どこから手を着けたら良いか分からないという状況になりがちです。まずは検討の範囲を絞り込むためにも、データ活用力強化の目的を明確化してください」(堀内氏)

一方で、データ活用に関する人材は超売り手市場だと言われており、必要な人材を確保するのが難しい現実もある。そこで堀内氏は人材を探す範囲を広げる「ボーダレス・リクルーティング」というアプローチ方法を紹介した。このアプローチは、国や地域などの境界を越えて有能な人材を見つけ、雇用することを目的としたものだ。被雇用者は雇用主のオフィスを拠点にする必要がなく、どこにいてもリモートで働くことができるのが特長である。また、有能な人材を確保するためには、給与に加え、働き方の自由度や裁量の範囲など、「人材に魅力を感じてもらえるような処遇を用意することも必要」だと強調した。