帝国データバンクは6月8日、1635社を対象に実施した価格転嫁に関するアンケートの調査結果を発表した。
昨今、新型コロナウイルスやロシア・ウクライナ情勢などを背景とした原材料費の高騰に加え、円安の進行などさまざまな要因で仕入れコストが上昇している。
同調査によると、自社の主な商品・サービスにおいて、仕入れコストの上昇分を販売価格やサービス料金に多少なりとも価格転嫁できている企業は73.3%となった。詳細を見てみると、「すべて価格転嫁できている」企業は6.4%にとどまり、「8割以上できている」企業は15.3%、「5割以上8割未満できている」は17.7%となった。一方で、「全く価格転嫁できていない」企業は15.3%となった。
また、価格転嫁をしたいと考えている企業で、コストの上昇分に対する販売価格への転嫁割合を示す「価格転嫁率」は44.3%と半分以下にとどまった。これは仕入れコストが100円上昇した場合に44.3円しか販売価格に反映できていないことを示している。
一部の企業からは、「零細企業のため、仕入価格上昇分の販売価格への転嫁は100%しなければ維持できない」(家具・建具卸売)といった声が聞かれた一方、「何とか値上げしたいが、取引先の了解が得られない」(こん包)や「価格交渉を進めたいが、他社との競争もあり厳しい状況」(印刷)など厳しい声もあがっているのが現状だ。
業種別の価格転嫁率をみると、「建材・家具、窯業・土石製品卸売」(64.5%)は全体(44.3%)を20.2ポイント上回った。また、「機械・器具卸売」は55.4%、「飲食料品卸売」は51.6%となった。企業からは、「一部の為替リスクなどで転嫁できない部分はあるが、それ以外は基本的には転嫁している」(雑穀・豆類卸売)といった声が聞かれたという。
一方で、特に原油価格の高騰の影響を受けているトラック運送などを含む「運輸・倉庫」は19.9%と全体を24.4ポイント下回った。また、小麦価格や輸送費などの上昇に直面している「飲食料品・飼料製造」(33.6%)も価格転嫁が進んでいない。
企業からは、「下請けの下請けでは価格転嫁など到底かなうものではない」(一般貨物自動車運送)との意見があり、多重下請け構造の物流業界では価格転嫁が厳しい環境にある様子がうかがえる。