ソニーは5月30日、スマートフォンの各種センサーとAI(人工知能)を活用した独自の測位技術で、店舗や施設内の客、従業員の行動データをリアルタイムに取得・分析する屋内行動分析プラットフォームの提供を開始すると発表した。価格はオープン。

  • 屋内行動分析プラットフォーム「NaviCX」の活用イメージ

    屋内行動分析プラットフォーム「NaviCX」の活用イメージ

サービス名称は「NaviCX(ナビックス)」。AIを活用した技術をベースに、近距離無線通信の「Bluetooth Low Energy」技術を用いた発信機であるビーコンや地磁気の情報を独自の測位アルゴリズムで組み合わせて、人の位置だけでなく向きの情報まで取得できるという。

具体的には、スマートフォンのジャイロセンサーや加速度センサーを使い、AIによりスマートフォンの微妙な揺れのパターンに合わせて歩行者の動きの特徴を抽出し、対象者の移動方向や移動距離を計測して現在地を推定する。

測位対象者の滞在時間、位置、動線や経路に加えて、これまでビーコンだけでは難しいとされていた対象者の向きの情報まで、リアルタイムに取得できる。また、対象となる屋内施設に設置したビーコンの情報で位置を補正した上で、地磁気の情報で測位精度と人の向きの補強を行い高精度な測位を実現するという。

  • 独自の測位アルゴリズムによる、測位精度の向上と向き情報の取得

    独自の測位アルゴリズムによる、測位精度の向上と向き情報の取得

例えば、来客に関しては、現在位置、店内/施設内滞在時間、立ち寄った場所と経路、サイネージ前など特定エリアでの滞留時間、アプリ立ち上げ人数などが取得できる。従業員に関しては、それに加えて現在および時間ごとの実施作業内容、各作業にあてた時間割合、品出し回数が取得可能。

また、場所ごとの滞在顧客数と従業員数、各通路の通行量、サイネージ前など特定エリアの立ち寄り人数、エリア相関などが取得できる。

さらに、事業者側の管理者には、SaaS形式で「分析・可視化ツール」を提供する。行動分析エンジンにより、対象者の位置や移動軌跡の表示、ヒートマップや各種グラフの作成が可能。また、ソニーが提供するSDK(ソフトウェア開発キット)を、事業者のスマートフォン用アプリケーションに組み込むことで、店舗や施設内にいるスマートフォン所持者の行動データを取得し、滞在時間や動線、経路などの詳細な分析結果も提供する。

ソニーはホームセンター、ドラッグストア、スーパーマーケットなどの大型店舗内や、水族館やイベント会場といった体験型施設内を含む、GPSなどでの測位が難しい屋内での活用を見込む。

またソニーは、サービス提供開始を前に、ホームセンターチェーンを運営するカインズの一部店舗で、「NaviCX」の実証実験を3月から行っている。パイロット店6店舗を対象に、業務端末を通じて「NaviCX」で店舗メンバーの業務状況を自動的に収集。詳細なデータに基づいたオペレーション改善につなげる考えだ。

また、300万人以上のーザーを擁するカインズアプリに測位機能を搭載し、来店客の買い物体験を向上させる店内販促施策などへの活用も計画しており、6月からトライアルを実施する予定とのことだ。なお、「NaviCX」の市場推定価格は、サービス利用費として1店舗あたり月額7000円前後からとなっている。