NECは5月30日、理化学研究所と共同で、AI(人工知能)を活用した画像認識において、新たな対象物を追加登録する際に必要となる学習データの作成作業を簡素化する技術として、「弱ラベル学習」の安定化と正しいモデルの学習の両方を同時に満たすアルゴリズムを開発したと発表した。

AIを活用した画像認識技術の利用にあたっては、新たな検知対象を継続的にAIへ登録することが必要となる。その際、新たな検知対象だけでなく、既存の検知対象についても対象物の位置とそれが何であるかの情報を教える必要があるため、学習データの作成が利用者の大きな負担となる。

今回開発された技術は、AIの学習に曖昧な情報を活用できる「弱ラベル学習」という技術を発展させたもので、AIに対象物を追加登録するときに問題となる学習データ作成の手間を削減しつつ、高精度なモデルを学習できる。

弱ラベル学習では、例えば、トラックやバスなどの車両を認識するAIに新たに「バイク」を学習させる場合、トラックやバスや背景に対してラベル付けをしない代わりに、それらが「バイクではない」という曖昧なラベル(弱ラベル)を付与する。そして、「バイクではない」という弱ラベルに基づいて、モデルの予測の正しさを逐次推定しながらモデルを最適化する。だが、ラベルの曖昧性に起因してAIの学習が不安定になり、高精度なモデルを学習できないという問題があった。

  • 「弱ラベル学習」において、新たな検知対象としてバイクを追加する場合の仕組み

両社の開発したアルゴリズムを活用することで、弱ラベルが付与されたデータからでも高精度なモデルを学習させることが可能だ。なお、同アルゴリズムを使った80種類の検知対象物を含む画像認識において、学習データ作成時間を75%削減できることも確認したという。