NECと杉並区は5月18日、安全・安心なまちづくりの実現に向けた行政DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みとして2月14日から4月28日までの期間で行った、AI技術を活用して道路灯へ設置したカメラ映像から交通流や人流を分析する実証実験の結果を発表した。

  • 実証実験のシステム構成

杉並区ではデータに基づいた安全・安心でウォーカブルなまちづくりを目指し、これまでも人手による交通流や人流のデータを把握するために測定を実施してきた。しかし人手による測定は、目視によるカウントなどの労力、費用、時間を要することから調査期間・時間が限定されるとともに、収集できるデータの種類の少なさや精度の偏りなどが課題となっていたという。

同実証では、杉並区の国指定史跡「荻外荘」付近にある区所有の道路灯に設置したカメラの映像から、NECソリューションイノベータの車両を中心としたシーン分析エンジン「FieldAnalyst for Vehicles」を用いて分析し、交通流・人流を匿名化し統計データとして可視化した。通行する車両数や歩行者数のデータだけではなく、車種や速度、移動方向、車線はみだしなどの詳細データを常時収集することが可能となり、車道や歩道整備のポイントを明確化されたという。

これにより、杉並区では分析データに基づいて道路の整備・工事計画を立案することが可能になるとともに、これまでの人手によるデータ収集および分析時に比べ、業務時間を90%以上削減できることが確認されたという。加えて、これまでは数年に1回(1日12時間)しか行えなかった測定が、日程・時間にとらわれることなく実施できるようになったとのことだ。

  • 道路灯に設置したカメラおよび通信BOX