いすゞ自動車グループでトラックの製造を行うUDトラックスとPTC ジャパンは5月12日、UDトラックスにおけるエンジニアリングチェーンとサプライチェーンのデータ連携を加速するための新たなデータプラットフォームを構築することで合意したと発表した。
UDトラックスは、顧客や社会のニーズを起点としてデータとデジタル技術を利活用してビジネスモデルを変革するとともに、組織、企業文化・風土を変革し、競争優位を確立することをデジタルトランスフォーメーション(DX)と定義し、DXを推進している。
以前よりPTCと連携し、製品の品質とコストの8割程度を決定すると言われる設計段階における効率化と生産性を高めるため、トラックなどの商用車の設計に必要なデータ連携を進めてきたという。
具体的には、PTCが提供する3D CADソフトウェアソリューションである「Creo」やエンタープライズ製品ライフサイクル管理(PLM)ソフトウェアである「Windchill」を活用し、設計部門が3D CADで構成したデータ情報と製造部門で流通する部品表などのデータを統合したデジタルモデルを構築。双方がスムーズに連携し、設計段階における問題点の早期発見、品質向上、後工程での手戻りによるムダの排除などを行ってきたとのことだ。
また、製品部門と販売部門のデータ連携に、事例を基にしたサービス対応策情報の集約、過去に生じた問題を検索し、参照することなどを可能とするPTCのソリューション「Service Knowledge and Diagnostics(SKD)」をはじめとするソリューションを採用し、プラットフォームの整備を進めている。
その中で、経営環境の不確実性が高まっている昨今、想定外の変化が発生した場合の対応力の強化が課題となっており、組織・企業間におけるシームレスで高度なデータ連携を可能とするデータプラットフォームの整備とアプリケーションの移行をPTCとともに進めることを決定したのだという。
具体的には、新たに工場IoTプラットフォーム「ThingWorx」および設計、 製造、 営業・アフターサービス領域におけるAR(拡張現実)ソリューション「Vuforia Studio」、「Vuforia Instruct」、「Vuforia Chalk」を採用、デジタルデータ利用領域を拡大していくという。
UDトラックスでは、すでにVR(仮想現実)やARツールを活用して、設計工程管理を行っているが、データ共有インフラを整備することで、例えば進行中の設計における試作品の試験データをデジタルツインに適用し、より迅速に問題の把握と対策を講じることが可能となる。
PTCは、商用車はカスタマイズの要素が強くサプライチェーンも多岐にわたるため、データを「集める」、「貯める」、「加工する」、「可視化する」 などの重要なステップを一貫性あるシステム環境で実行することで、大幅に効率性・生産性を高めることができるとしている。
UDトラックス デジタルソリューションズ&IT部門統括の何慶輝氏は、「DXは、単にアナログなプロセスをデジタル化するだけではなく、コアビジネス、そして企業文化の変革を通じ、社会に付加価値を提供すること、つまり、すべてのステークホルダーにとって“ベターライフ(より良い暮らし)”を提供することだと考えています。今回、PTCという強力なパートナーを得て、不確実性を伴う非連続的な変化へのエンジニアリングチェーンの対応力を高めるだけでなく、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンのデータ連携、およびさまざまなパートナーとの共創を通じた新たな価値創造に挑戦できることを嬉しく思います」とコメントした。